【銀魂】いのちがほしい弐【沖田総悟】 (ページ14)

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第五十八訓ページ14

「俺に依存しねぇって言ったくせにこうやって腕は組むんだねィ」

如何にも怪しい扉を前に沈黙が流れたので、俺は冗談のようなはたまた嫌味のような言葉を口に出すと、彼女はパッと俺から手を離した。

「…開けてもいい?」
「ドーゾ」

ところどころ錆びているようで、かなり力を入れて彼女は扉を開けた。
だが、開けても真っ暗で何も見えない。ただ、ひんやりとした空気だけが足元を通り抜ける。冷房で冷やされた空気ではなく、元から冷たい空気のようだ。ズボンの裾から入り込んだ冷気が素肌に触れただけで鳥肌が立つ。

意を決してペンライトをかざした。Aはヒュッと喉を鳴らす。俺も思わず生唾を飲んだ。
壁際にあった電気のスイッチをつける。まだ電気は通っているようで、薄緑の気味の悪い照明が部屋を照らした。それでもまだ薄暗い。

瓶に詰められた胎児達が、そこには並んでいた。床から天井、部屋の手前から奥まで上下左右隙間なくぎっちり並ぶ標本瓶には薄緑の照明が照らされ、中の生命活動を終えた胎児達が不気味に黄色がかかったホルマリンの中に浮かんでいた。

瓶ひとつひとつには生存期間や生年月日等が記録されているが、名前はなかった。いや、アルファベットと数字が書かれているのでそれが名前なのだろう。例えばこの胎児の名前は「J-00351」だ。

おそらく、細胞分裂の際に失敗した個体も存在するのだろう。それらを合わせたらいったいどれほどの数がいたのか。それらを経て、Aが出来たのか。
考えただけで吐き気がする。

…頭を振って、嫌な考えを振り払う。俺達が見に来たのはとある個体。これらの胎児とは全く違う、人間のようで人間ではない、子供の標本。

静かに部屋の奥へと進むと、一際大きなガラスケースがそこにはあった。先に来ていたAは何も言葉を発さずにその標本から目を離せなくなっていた。

人間と呼ぶにはあまりにも冒涜的なモノだった。
本来足がある部分から何本も生えているタコのような触手、腕がには青緑色の鱗、腹には帝王切開のように縦に割いた傷があり、そこからはツタのような植物が伸びている。だが、その顔はAと同じで、寝ているかのように目を深く閉じている。

【生年月日：1✕✕✕.06.25】
【没年月日：1✕✕✕.06.21】
【生存期間：361日(11ヶ月+27日)】
【製造番号：R-03628】

あと少しで1歳を迎えられたこの子は、何を思いながら生き、死に絶えたのだろう。3歳くらいなら、自我は芽生えていたはずだ。