総務部のカノジョ７(JW桃)

335_works：pink side ページ35

*

【pink side】




・・・




冴『幼馴染みたいなもんなんやけどね、』




これ、と言って向けられたスマホを覗くと
優しそうに微笑む男性と
冴島さんの写真が映っていた。




冴『丸山グループって知ってる？
京都では結構有名な老舗百貨店なんやけど』

桃『丸山って、あの丸山！？マジで！？』




俺が驚くのも無理はない。




丸山グループといえば、京都だけじゃない、
今や全国に名を轟かせる大企業やから。




冴『そこの長男やねん、この人。
やのに結婚して婿養子なってもいいよーって。
うちみたいな呉服屋継いでくれるなんて
親も願ってもないことやってさ。
自分やって長男やのに、変な人やろ(笑)』




あははと眉尻を下げて笑いながら、
どことなく嬉しそうな冴島さん。




可愛らしいな、とも思えるのは
関西弁になったせいやろうか。




桃『めっちゃ優しそうっすね』

冴『うん、優しさの塊みたいな人』

桃『冴島さんも惚気たりするんや(笑)』




政略結婚！？なんて話しとったけど、
全然そんな感じちゃうわ。




桃『…やっぱ、その、
旦那さんの事、好きなんすか？』




思い切って核心をついてみると、
冴島さんは少しだけ驚いて
俺の顔をじっと見て笑った。




冴『好きやなかったら結婚でけへんよ(笑)』




その言葉を聞いて安心したような、
でもちょっとだけ寂しいような気もした。




流星の事思うと、
なんとも言われへんなぁ…。




桃『えっ、てことはその、
浮気だのなんだのって噂は…』

冴『ん〜、浮気はしてへんけど。
結果的に裏切っちゃったの私やし、
何言われても仕方ないかなって。
ほら、流星あれでめっちゃモテるし(笑)』

「やっぱり…」




『言いたいやつには言わせとけばいいのよ！』
なんて、まるで他人の事みたいに話す冴島さんは
ほんまに裏表のない人なんやとわかった。




冴『…流星はさ、』




一瞬だけ視線を下げた冴島さんは
またすぐに口角を上げて話を続けた。




冴『…流星にはね、
自分の道を行ってほしいのよ。
ほら、うちの実家の事、
足枷にしたくないってゆうか。
流星と別れたのも、彼の伸びしろを
私の都合で潰したくないと思っちゃってさ。』




…あ、また標準語戻ってる。




桃『でも…！別れへんくても
なんか他に道が…』

「…でも、わかる気するなぁ」




じっと黙って話聞いてたAちゃんが
穏やかにそっと口を開いた。

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