エリオスの亡霊 (ページ7)

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ヒーローだった人ページ7

グレイsaid
夜、共有部屋に浮かぶ白いワンピースの女の人…
「…んー？どうかしたの、レイ君」
「あ、えと…Aさんって…」
「あは、Aでいーよ？同い年でしょ？」
けらけらと笑うと目線を合わせるように降りてきた。窓から差し込む月の光が彼女の透ける体を光り輝やかせていて、目が合わせられない…

「何か飲みたいものでもあった？眠れないなら、ボクが話し相手になってあげるよー」
「あ、いや…じゃあ、話し相手に…」
「はーい」
隣に座るように浮かぶAさんは、同い年とは思えない。
姿はそれよりもずっと若いし、心はもっと落ち着いている。

「どうして、Aさんはヒーローになったの？」
画面越しで見た彼女はいつもかがやいていた。だから、もっと他の道もあったんじゃないかと思った。
「そんなの、ヒーローになりたかったからだよー、ヒーローって存在になりたかったの」
記憶がほとんどないという彼女は、当たり前だとでも言うような自信に満ちあふれた表情で答えた。

あ、これは聞いたことがある。
LOMで傷ついた彼女が言った言葉だ、男性ヒーローに力が劣っているのを自覚しているのに、なぜ続けるのかと意地悪く聞かれた時に。
「だって、ヒーローでいたいもの、それに、男に勝ったんだから別にいいでしょ？」

「格好いいなぁ…」
「んー？ありがとねー」
「あ……」
口に出ちゃってた…
「少し、思い出したの、アルブ君のメンターになったときのこと、あの子ったらボクが同い年で、しかも女だからって飲み物買いに行かせようとしたんだよ？ここまで舐められるとは思ってなかったから、つい、組み手の時に全力のジャーマンスープレックスを…」
「あ、アッシュが！？」
「家の力使ってクビにされるかなぁと思ったけど、首治った瞬間、また勝負挑まれるしさぁ…」
おかげで技術上がったけどと、思い出し笑いをする。
あのアッシュがそんなことになっていたなんて…
「楽しかったなぁ、あの頃は…自分が死ぬなんて思ってなかったなぁ…
「……」
丁度、月が雲に隠れて彼女は見えなくなった。けど、きっと寂しそうな、悲しそうな顔をしているんだろうな…
「でも幽霊になって、また皆にあえて…きっとこれからも楽しいよね！」
また月が出たとき、レイ君にも会えたし！と僕に向かって微笑んだ。やっぱり彼女はヒーローだった。