【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ8)

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【１９４】side無しページ8

「それが本当に薬だっていう証拠は？」
「それはこの薬の成分を調べてもらえば……」

わざとらしく溜め息を吐き出した警官は「困るんだよ、誰が要請なんか出したか知らないけど」と、緑谷の手にある薬が入った袋を奪うと男達を連れてパトカーへと戻って行く。

「君達の役目は陽炎の確保だろう。売人だの敵(ヴィラン)だのは此方で取り締まるから、君達は君達の役目を果たしなさい」
「はあ！？テメェ等が取り締まり切れてねぇからやってんだろうがよ！！」
「はぁ……あまりにも度が過ぎるなら、次は公務執行妨害で君達を逮捕しないといけなくなるよ」

そうパトカーに乗り込み、その場から去って行く警官に面々が唖然としていた時、泣いていた女の子は「ムダだと思いますよ」と、小さな声を上げたのだ。

「無駄……？」
「この街のヒーローも警察も、みんな薬の中毒者で……仕事なんてしないし、誰も助けてくれない……」
「それ配っとったテメェが何言っとんだ」
「だって……こうでもしないと、私達みたいな子供は生きていけないから……」

話し出した女の子に詳しく聞くと、何年も前からこの街には薬が蔓延している様で、クッキーを切っ掛けにヒーローや警察も今や薬を求める顧客と成り果てているという。この街の大人の大半が中毒者であり、そんな親を持つ子供はどうにかして生活費を稼ぐ為に売人の手伝いや観光ガイド、街の清掃といった仕事を請け負っているのだという。

幾ら自分達が売人や敵(ヴィラン)を捕まえたとしても、ヒーローや警察が薬の為に逃がしていては意味が無い。そう女の子の話を聞いて言葉を失う面々は「この街はもう……死んじゃってるんだよ」と、呟く女の子に何も言えなかったのだった。

「でもね、陽炎が敵(ヴィラン)をやっつけてくれて、薬が入って来る量が減ったの……」

女の子の言葉に今回自分達に掛かった要請の本当の意味を察してしまった面々は「何処まで腐り切ってるんだ、この街は……！」と、怒りを顕にする。

中毒者と成り果てたヒーローや警察にとって、陽炎は邪魔な存在だ。だが、自分達には確保する術が無いどころか、薬に浸る生活のせいでまともに動く事も出来やしない。その為、外部の人間、それもまだ子供であるヒーロー候補生に陽炎を排除させようとしていたのだと、眉を顰める面々は「今日はもう戻ろう」と、撤収したのである。