【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ41)

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【２２７】ページ41

昨日の朝に連れ去られ、焦凍君のお陰で私は今こうしてあの檻から出る事が出来ている。こうして考えてみると、時間的には一日しか経ってはいなかったけれど、それでもずっと会っていなかった様に思えて仕方が無かった。

焦凍君が此処に居る。繋いだ手の温もりも、私の名前を呼ぶ心地の良い声色も、焦凍君の存在が確かに此処に在るのだと、それ等全てが証明していた。

「……焦凍君、来てくれてありがとう」

まだキオさんが追うのを諦めてくれた訳では無いけれど、それでも今、どうしてもそれを伝えたかったのだ。カイ君にこれ以上人を殺めさせない為に足掻く事を止めてしまいそうになった私を、焦凍君はこうして連れ戻してくれた。引き戻してくれた。だから、もう……私は迷ったりしない。皆を、お父さんを、焦凍君をこれからも望み続けていたいから。

感謝と、その一言で済ませられる様なものでは無かったけれど、溢れる思いをそのまま音に乗せてそう言うと、焦凍君は切なげに眉を顰めながら私を抱き締め「抑えてやれねぇだろ。そんな事言われちまったら」と、耳元で声を掠れさせる。

「お前が無事で良かった……すげぇ心配した」
「ごめんね……」
「もう、何処にも行くなよ」

そうｺﾂﾝ……と、私の額に軽く同じものをぶつけて来た焦凍君に「うん。もう、何処にも行ったりしないよ」と、笑みを浮かべた。

そして、焦凍君は名残惜しそうに離れると「続きは戻ってからだ」と、部屋の奥へと進んで行き、バルコニーへと近付いて行くので、私の個性を借りたいと言っていた意味を否が応でも察してしまう。

「え、あの……焦凍君？まさか、飛ぶの……？」

正気を疑う様に焦凍君を見れば、焦凍君は「この天気なら個性全開でやれば俺も抱えられるだろ」と、何を根拠にそんな事を言うのか、私には全く分からなかったけれど、そうこうしている間にも玄関がﾄﾞｦｫｫﾝ!!と吹き飛ばされる。

「A」

急かす様に名前を呼ばれ、この状況で私達が脱出するにはそれしか無いのだと覚悟を決め「う、うん。でも、恥ずかしいから前向いてて……？」と、バルコニーに出て焦凍君を後ろから抱き締める。