【２１６】 ページ30
「……そう言えばさ、Aちゃん。孤独って感じた事ある？」
そう静かに問い掛けてくるカイ君は私の背から降りると、ソファーにある携帯をキオさん？に投げ渡す。それに思わず眉を顰めれば、カイ君は「ごめん、もう投げないから睨まないで？」と、眉を下げる。
取り敢えず、いつまでも四つん這いというのも不格好が過ぎる為、その場に座り込むと「Aちゃんってそういうのとは無縁な気がするんだけど、どうなの？」と、どうしてそんな事を聞いてくるのかは分からなかったけれど、カイ君の言葉に思わず目を逸らす。
私は孤独な訳では無い。皆やお父さん、それに焦凍君も居てくれる。だけど、それでも私は皆と同じになる事は出来無い。それは皆の様な光り輝く一等星という意味合いでは無く、幾ら相澤Aと名乗っても、私はこの世界の人間ではないという変え様の無い事実だけがﾎﾟﾂﾝと残されているからだ。
焦凍君の実家にお邪魔した時、確かに私は孤独を感じた。あれ以降は焦凍君の心臓に優しく無さ過ぎる一件があった為、有耶無耶になってしまっていたけれど、それこそが私が孤独では無い事の証明なのだろうと、自然と笑みが零れる。
忘れてしまう程、有耶無耶になっていた事もこの話題を振られるまで考える事も無かった。それは、皆やお父さんや焦凍君が孤独なんて感じる隙すら与えず、ずっと傍に居てくれたからだ。
「カイ君の目にそう見えてるなら、それは私の傍に居てくれる人達のお陰だよ」
以前の私なら、今頃現状に悲観して惨めったらしくみっともなく泣き喚いていただろう。それこそ、寝室で塞ぎ込んでいたとしても不思議では無い。こんな風に携帯を取り返そうとあれこれ行動に移す事も出来無かった筈だ。
「私には皆が居てくれる。暗い夜道でも、優しく照らしてくれる一等星達が居てくれる。だから……私は孤独じゃないよ」
そうカイ君の目を見れば、カイ君はつまらなそうな顔をしていて「ふーん……じゃあさ、ヒーローの卵達が居なくなったら孤独になるんだ」と、不穏な言葉を掛けてくる。
「孤独になったAちゃんは、次は何でそれを埋めるの？」
「っ……！」
「Aちゃんの言い方はさ、元々は孤独だったけど、今はヒーローの卵達が居るからそうじゃないって言ってるだけで、根本的な孤独の解決にはなってない訳じゃん？」
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作者名：パル | 作成日時：2022年4月2日 23時
