【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ26)

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【２１２】緑谷said ページ26

常日頃、僕達は彼女へと向かう轟君の想いを口から砂糖を吐き出すくらい何度も目にして来た。時に彼女の純粋無垢な言葉が彼を容赦無く刺し、それでも何とか告白までこぎつけたのが少し前の事で、漸く彼女が轟君をそういう意味合いで意識する様になったというのに、再び彼女の身に危険が降り掛かったのが現状だ。

あの彼女だけに注がれる甘ったるい眼差しも、彼女を見詰めるだけで放つ幸せオーラも、今はその全てが怒りに変換されたかの様に轟君の憤りは直接向けられていなくとも、中々に息苦しさを感じさせる程だった。

「どいつもこいつも、AチャンAチャン。俺には全く理解出来ねぇけど、あの普通っぽい子の何がそんなに良いんだ？お前くらいのイケメンなら他にも選びたい放題だろ」

ｽｩｰと、静かに息を吐き出す轟君の周囲が音も無く凍てつき始め、完全に仕留めるつもりなのか、轟君はﾎﾞｯと左半身に炎を纏わせる。

「……お前には死んでも分からねぇだろうよ。目に映る世界がどんなに薄汚ぇもんでも、それすら綺麗だってクソみてぇな現実を受け止めて前に進もうと足掻く彼奴の努力も、たった一人で訳分かんねぇ場所に放り込まれた彼奴の孤独も、何一つ……分かって堪るか」

そう吐き捨てた轟君のその言葉の意味を100%正しく理解する事は僕達にも出来無かった。けれど、そこに込められた想いは常日頃目の当たりにしているそれとは格段に違っていて、轟君がどれだけ彼女を想っているのかを如実に物語っていたのだ。

「泣き言も弱音も、彼奴がそれを晒す場所は俺だけで良い。幾らお前等が彼奴を泣かせようが、俺が惚れた女は簡単に泣き寝入りする程弱くねぇよ」

カッ……と、声が漏れそうになるのをｸﾞｯと堪える。男の僕でさえ思わずカッコイイと声を上げてしまいそうになる程、容姿のそれとは違う意味合いで漢を感じさせるには充分過ぎるものだった。

「ヒュー……言うねぇ」
「歯ァ、食いしばれよ。加減は出来ねぇぞ」

そう不敵に笑う轟君が目をかっ開いた直後、冷却された空気が一気に左の炎により高温度へと変わり、その際に巻き起こる爆発が倉庫内を乱そうとした時、それは急に禍々しい何かにより呆気無く鎮火されてしまったのだ。