【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ21)

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【２０７】ページ21

要約しようにも脳が処理を拒むかの様に飲み込めず、それでも何とか理解しようとするけれど、理解は出来ても到底納得出来る話では無かったのだ。

ヒーローや警察も薬の中毒者であり、売人から平然と薬を買い、昼夜仕事もせずに遊んでいると。薬を運んで来る敵(ヴィラン)を殺す陽炎が邪魔で、それを排する為に皆に応援要請が掛かったのだと、そう話すカイ君は「だからこそ、ヒーロー卵には陽炎の件しか通達されてないんじゃないの？」と、言葉を続ける。

「そんな訳……」
「事実だよ。現に今俺達の仲間が敵(ヴィラン)の取引を邪魔しに行ってるけど、多分、そこにもヒーローが夜間警備とか何とか言って、取引を邪魔されない様に港を張ってるよ」
「仲間……？」

そうカイ君を見れば、カイ君は「まだ話してなかったっけ」と、私の前に来るとそれはそれは丁寧にお辞儀をして「改めまして、俺はカイ。陽炎のリーダーをやってます」と、ﾆｯｺﾘと微笑む。

「陽炎……！？しかも、リーダー……？」
「そ。因みに歳はこう見えても十九だから、多分Aちゃんより年上だよ。確か高二だったっけ？」

カイ君が十九歳で陽炎のリーダーで……って、益々理解が追い付かない。何の冗談だろうかと、カイ君を見るけれど、カイ君は「信じられないって顔だね」と、猫は被らないと言いながらも無邪気そうに楽しげに笑っていた。

「個性の影響でさ、成長が止まってるって言うより、普通の人よりも成長速度が遅いんだよ。何でもかんでも食う個性でさ、俺の成長の半分コイツに食われてるって訳」

そうカイ君は徐に手を水平に翳すと、掌から黒い禍々しい顔のある塊を出したので、思わず身を引いてしまうと「大丈夫、食べたりしないから」と、カイ君は直ぐにその個性を仕舞ってくれた。

「な、なに……今の」
「何って、俺の個性だよ。グラトニーっていって、何でもかんでも食べるんだ。形あるものから無いものまで、全部」

愉快そうに目を細めるカイ君にｿﾞｯと冷たい何かが背筋を走り抜ける。今の話が全て本当であると、そう物語る様にカイ君はその身の内に得体の知れない何かを飼っている様に思えて仕方が無かった。