【２０２】side無し ページ16
全く同じ物を持っている轟はそのキーホルダーを見て目を見開くと辺りを見渡し始め、浜辺から道へと向かう足跡を見付けると、それを追う様に歩き出す。だが、それは道路へと出た途端に途切れてしまい、五人は嫌な予感を走らせる。
「……ねぇ、皆に知らせた方が良いんじゃない？何も無ければそれに越した事は無いし、連絡が付かないってだけでも知らせておいた方が良いと思うんだよね。誰かが街で見掛けたらウチ等も安心出来るしさ」
何も彼女は一人で行動していた訳では無い。だが、彼女と一緒に居たのはやけに街の内情に詳しい子供であり、わざわざ彼女を通じて生徒達に伝言を残す様な怪しげな人物だ。爆豪が陽炎の一員ではないかと勘繰っていた様に、他の生徒達も彼女の前で口にこそ出さなかったが、その可能性を視野に入れていたのだ。
彼女の身に何か遭ったと考えるには情報が少な過ぎるが、この街には怪しげな薬だけでは無く、人攫いも横行しているという話もある。その為、その子供と共に彼女が攫われた可能性も十二分に有り得てしまうものだったのだ。
「轟、一時間は様子を見た方が良い。折り返しが来るかも知れない。だが、それが無かった場合は俺達も探す」
携帯を握り締め、焦燥を顕にする様に眉を顰める轟に声を掛けた障子は「清水は俺達にとっても大事な友人だ。一人で気負い過ぎるなよ」と、軽く轟の肩に手を乗せた。
「……わりぃ」
それから他の生徒達にも彼女と連絡が取れない事を伝え、折り返しがある事を祈りながら一時間パトロールに専念するが、一時間が経過しても折り返しどころか、メッセージに既読すら付かない事態に生徒達は本格的に彼女の捜索へと切り替えたのである。
出払っている相澤にもこの事を伝え、直ぐには戻れないにしても、応援要請が固まり次第早急に戻るとの返事があったという。その間、相澤は生徒達に彼女を一生徒では無く、娘を頼むと告げていたのだった。
そして、日が沈み出した夕時になっても彼女の行方は勿論、連絡さえ付かないままだったのである。
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作者名：パル | 作成日時：2022年4月2日 23時
