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カイ君は不思議な子だ。純粋無垢な笑顔で無邪気にはしゃいでみたかと思えば、こうして大人びた表情を時折見せる。子供でありながら精神年齢は大人の様な、そんなチグハグな何かが垣間見える。
「ねぇ、Aお姉ちゃん。これだけボクが貰っても良い?」
「うん!一緒に集めよう?」
「ボクはこれだけ良いよ。後は全部Aお姉ちゃんにあげる!だから、たくさーん!集めてあげるね!」
そうポケットに桜貝を仕舞い込んだカイ君は早速と言わんばかりに浜辺に散らばる桜貝を拾い集めてくれて、同じ様に綺麗な形のそれを掌から零れ落ちそうな程集め、あっという間に持ち切れなくなってしまったのだ。
「うーん……鞄に入れちゃうと割れちゃいそうだしなぁ……」
「Aお姉ちゃんの帽子は?」
そう被っているキャップを指差しながら小首を傾げるカイ君に「えっと、この帽子は困るかな……?」と、言うとカイ君は純粋無垢な瞳で「なんで?」と、問い掛けてくる。
「この帽子、サポートアイテムでね。これが無いと今の時期は出歩けないんだ」
「そうなの?サポートアイテムって事は個性の影響だったりするんだよね?Aお姉ちゃんの個性って?」
「えーっと、こう太陽光発電システム的なあれで……」
自分でも個性を上手く説明出来無い為、そんなあやふやな説明になってしまうけれど、実際に私の個性に名称は付けられて無かった様に思う。焦凍君の個性である半冷半燃の様な呼び方は無くて、そういう呼び方は一体誰が決めるものなのだろうか。
「何それ!すっごく見たい!」
「あ……えと、ごめんね……?」
申し訳無く思いつつも、服が焼けてしまう事もありそう言うとカイ君は意外とすんなりと諦めてくれて「じゃあ、ボクがお土産屋さんで袋貰ってくるよ!」と、呼び止める間も無く駆け出して行くので、呆気に取られながらもその場に腰を下ろした時……
「あー……居た居た。何処ほっつき歩いてるかと思えば、まだ浜辺に居たのか」
いつからそこに居たのか、振り向くと気怠そうに煙草を咥えた青年が立っていて「アンタがAお姉ちゃん?」と、声を掛けてくる。
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作者名:パル | 作成日時:2022年4月2日 23時