結局私は最初から、帰るべき場所を探していた ページ47
〜竜胆side〜
温かい。
これは、松陽先生に抱きしめられた時の、
『幸せ』というやつだ。
先生が亡くなったと知って以来、
もう二度と味わうことは無いと思ってた。
だけど、今、
私は、銀時に抱きしめられながら、また、銀時の隣にいる先生にも抱きしめられているような、
なんとも懐かしく、芳ばしく、胸が締め付けられるような不思議な気持ちになっていた。
(先生、どこにいるのかと思っていたら、こんな所にいたんですね、
やっぱり銀ちゃんの隣には貴方がついているのですね。)
本音を言おうとした口を、新しい人生を歩もうとした足を、新しい愛をつかもうとした手を縛っていた鎖が解けたように、
力が抜け安堵したと同時に座り込むと、同じ様に銀時も座り込んだ。
お互いがしっかりと本来の目の色を見つめ合いながら向き合った。
ほとんど赤い血で覆われている銀時が、ふっと小さく笑って口を開く。
「その泣きっ面見たら、全部思い出したんだ。お前がおもらししたのを俺のせいにされたこととかさ。」
力もないくせ無理に口角をつり上げてニヤける銀時。
「でも...結局先生にバレてさ...恥ずかしくて泣いていたら銀ちゃんが...」
「あー、何だっけ、何かあげたよなそういや、饅頭?」
未だに止まらない涙は、抱え込んでいた憎しみや妬みや寂しさや切なさをみるみるうちに流していく。
このまま、このあまりに優しすぎる現実に抱かれても良いのだろうか、
その質問に対して、目の前の銀時は優しく微笑んで手を広げているように見えた。
「うん、栗饅頭、もらったよ.....」
(私達しか知らない話.....本物の記憶....)
眉間に皺を寄せ、嗚咽を押さえるように口に両手を当てた。
「おかえり、竜胆。随分待たせちまったな。」
「....会いたかった.....ずっと会いたかった.........」
「もう二度と忘れねェ、もう二度と、お前を独りにしねェよ。」
その言葉を聞いた瞬間、私はまた大きな衝撃を受けると同時に自嘲じみた笑みを浮かべた。
(そっか私....独りが嫌だったんだ...寂しかったんだ...
まだ子供なんだ...)
再び口を開く銀時の声に、俯く顔を上げた。
「そしてもうどこにも行くな、地獄にも天国にも行かずここにいろ、一人の人間として生きろ。
先生だってそう願ってるだろーよ。」
そう言って微笑む銀時はやはり、私があの頃から尊敬してやまなかった憧れの彼だった。
相変わらず強い人だった。
罪は己が決めても大した意味を持たない→←愛したのは先生、憧れたのは貴方
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紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時