異世界人と万事屋３【銀魂】

嘘が嘘を呼び嘘まみれになると何が嘘なのかも分からなくなる ページ30

〜神威side〜


俺が先に質問したって言うのに、



質問で返された。



目の前の赤目が訝しげに俺を睨む。


仕方ないな、何か答えよう。

でもここで研究所に連れ戻すなんて言っても理解できないだろうし、何より時間の無駄だ。


何か適当な理由は...


「...あの連続殺人犯に俺達の部下も殺されたんだ。だから敵討ちに」

言い終わる前に目の前の男が必死な声を被せてきた。

「それって、『狐の虐殺鬼』って呼ばれてるあの、あの殺人犯か...？！！」

「そうだけど、」


俺の返答で黙考し始めた銀髪の侍に待つ暇もなく訊ねる。


「俺は答えたんだから、そっちも答えてよ。」


「あーそうだな、わりぃわりぃ、あの女を追ってる理由だろ？大した理由じゃねぇよ、

俺の知り合いに似てたもんだから声掛けたっつーだけだ、人違いだったけど。
それがまさかあの有名な殺人鬼だったなんてな、ま、俺達にゃもう関係ねーよ。
敵討ちだかなんだか知らねぇけど、ご苦労さん。」

言いながら男は地面に落ちている服を拾い着直す。



嘘が下手くそだなぁ、


俺の嘘に気づいたからか。


『天人連続殺人犯の狐の虐殺鬼がついに死刑判決』

電化製品店で見たテレビ画面のテロップを思い出す。


そう、狐の虐殺鬼は既に牢屋にいる。



(まあ、今捕まってるのは恐らく"合鍵"の方だろうけど。)



殺人鬼がここで俺に追われてるわけが無い。



だからこの男が俺の言葉を素直に信じたわけが無い。


この銀髪の侍が嘘をついているのは分かったが、本当の目的と関係はまだ分からない。



とりあえず、あの女に手を出さないよう


ここで足止めしておいた方が...


「オイ団長、早く追った方がいいんじゃねェの？またすぐ消えちまうぞ。」

背後の阿伏兎の声に冷静を取り戻す。



そうだ、まだ近くにいるはず、さっさと追わないとまた姿をくらます。



(焦らされるの性に合わないのにな、)


長期戦の追いかけっこに飽きていた俺は、心の中で一言ぼやくと、女の消えた路地へと走り出した。



阿伏兎達の足音が近づき、「ずらかるぞ」という男の声が遠ざかっていく。



多分またあの女に接触するかもしれない、


アイツらには目を付けとこうかな。



あの女が身を隠すために赤の他人の力を借りるようなこと、今まで無かったし、


やっぱり何か関係があるはずだ。




さっきまでの表情を崩して、俺はニヤリとほくそ笑みながら呟いた。




「どっちが先に狐を捕まえるか競争だよ。







お侍さん。」

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