異世界人と万事屋３【銀魂】

あの晩何があったのかという話 【後編】 ページ16

〜神威side〜


「夜兎に何かされた？」


俺は笑顔を繕ったままわざとらしく核心をつく言葉を吐いた。


「あんたに話してやる義理はない。」


そう言いつつ、記憶が蘇りでもしたのか、頬の返り血を涙が何度も滲ませる。


音もなく涙と血が滴り落ちる。


お互いどう動くかと睨み合い、緊迫する空気。



足元には獣の肉叢が転がり、地面を染める血の匂いがむせ返る。


すると遠くから厄介な奴らの足音が耳に入った。



「おい！！誰かいるのか！！！看守は何してる！！！」


男の怒号が響き渡り、ふと後ろを振り向いた瞬間、俺は不味ったと舌打ちを鳴らした。


この刹那に"鍵"はまんまと姿を消して逃げてしまった。




だけど、まあいい。




行方は確保した。



脚を受け止めた時に、足袋の踵に発信機をつけておいたのだ。





(もう逃げられないよ。)


くつりとほくそ笑み、現場から抜け出し満月の夜空の下に出た。



屋根の上に立つと、下ではわんさかと集まったパトカーがサイレンを響かせ、赤い光を放っていた。



「こりゃまたニュースになるなァ。あれ、何で土産がないんだ？」


瓦にずっと腰を掛けて待機していた阿伏兎が拍子の抜けた顔で訊ねてきた。


「いいんだよ、もう捕まえたから。」


「はァ？捕まえたって、捕まえてないじゃねぇかこのスットコドッコイ、」

「発信機をつけたんだ。」


その言葉を耳にするとそーかい、と調子を戻した。


「早速後追うか？」

「いや、泳がせるよ。もしかしたら"合鍵"と面識あるかもしれない。」

「ははァん、一石二鳥か、貪欲だねェ。」


「やだな阿伏兎、策士って言ってくれよ。」



戯言を言い終わると俺達は喧騒を背に、アジトへと帰った。



───────────────────......



それから数日泳がせながら後をつけたものの、どうやら"合鍵"とは接触する様子もないため、


本格的に捕まえて持って行こうと一斉に"鍵"を追いかけることにした、



その日。




俺達に勘づいて人混みに紛れた"鍵"が途中で発信機を落とし、
赤く光る現在地の印が大通りから微動だにしなくなった。


「どーすんだ団長、」

阿伏兎の声に冷然と答える。

「まだ近くにいるだろ、探すよ。」


何手かに分かれて探す事になったが、裏通りから叫び声と銃声が響き渡り、
それを目がけて俺達は合図もなく集まった。




ようやく辿り着いて屋根から見下ろせば、



血塗れの見知った顔が俺を見開いた目で見つめた。

粗筋〜神威同様おびき寄せ作戦を実行する事にした万事屋三人衆→←あの晩何があったのかという話 【中編】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す