馬鹿じゃないと上手くいかない事もある ページ14
「えっ、信じてくれるんですか。」
「アホか。」
希望の光が彼の素早いツッコミで即座に閉ざされた。
「つまりあれだろ?お前、家出したんだろ?つくならもっとマシな嘘つけよ。」
(ああ、そっちに受け止めたか...)
やはり現実はそう簡単に上手くはいかなかった。
「俺は家出は悪い事だとは思わないぞ、人間逃げたくなる時だってある。だから正直になれよ、聞いてやっからさ。」
私の気持ちを察したかのように微笑を見せて肩に手を乗せる銀さん。
(まあ、無理もないか....)
本当のところは、少しほっとしていた。
異世界から来たなんて非常識的な事を簡単に信じるようであれば、
銀さんの頭を疑う羽目になっていたに違いない。
銀さんがそんな馬鹿じゃないという事に、安堵したのだ。
「話すことなんて無いです。」
「一丁前に遠慮か?そういうのいいって。」
私は沈黙を決め込む。
「...ずっとこうしているつもりか、まさかここ本当に住処にするの?」
「しません...」
こんな時でも冗談言うなんて、本当に、
調子が狂う。
私のぶっきらぼうな反応で手を焼かせてしまっていることは分かってる。
でも、
「もう、放っておいて大丈夫なんで。」
私はさらに銀さんの良心を踏みにじるように、突き放すような冷たい言葉を吐いた。
「ほら、濡れてますよ。」
追い打ちをかけるように、私の方に傾ける傘の取っ手を握る銀さんの手を押しのけた。
「世話になりたくねぇってか。まあそんなに俺の事嫌いなら大人しく帰るわ。傘はやる。」
そう言うと、傘を開いたまま自分の足元に置き、背を向けてスタスタと去って行く。
雨音はラジオの砂嵐のようなノイズに聞こえる。
傘の布地の表面に弾け飛ぶ雨粒をただ無心で見つめる。
その傘は、彼の不器用な優しさの具現化したものだった。
こんなに優しくしてもらった恩人に、私はなんて失礼なことをしてしまったんだろう。
もう合わせる顔がない。
「おい。」
声がした。
合わせる顔なんてないと思っておきながら、本当はもう一度聞きたかったさっきの声が。
「普通追いかけて来るだろー、あの流れ。何で来ないの。」
相変わらずの冗談めいた話し方で私の元に戻ってきた。
「な、何でと言われましても.......」
本当はちょっと笑いそうになりつつ平然を装う私。
(ダメだな、もう。)
私は観念した。
この人の優しさには調子を狂わされる。
『意識しているのはいつも自分だけだ』と、人は勝手に思い込む→←あなたはその人が例え絶世の美女でも異世界から来たと言われたら信じますか
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のと丸(プロフ) - 雪華さん» わー!鋼錬の小説で、コメントして下さった方ですよね!ありがとうございます!(´∀`*)続編というか、新作ですが;; (2019年7月15日 9時) (レス) id: 3187970ecf (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - 続編おめでとうございます! (2019年7月15日 8時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
のと丸(プロフ) - みぃさん» 初めまして!コメントありがとうございます!!ご感想とても嬉しく、励みになります!。°(°´∀`°)°。銀魂の小説は初めてなので至らないところがあるかもしれませんが、今後とも楽しんで下さい(´▽`*) (2019年7月13日 16時) (レス) id: 3187970ecf (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 初めましてです!とても面白いです!この作品が大好きです。更新頑張ってください! (2019年7月13日 16時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年7月10日 22時