3270話 ページ37
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変わらない味、変わらない場所、変わらない平穏。
平和が続くのは一見、良い事だ。安心出来る場所が一つでもあれば、人生を割と違った見え方で生きれる。けれど、今の私にはあまり良い事という風に捉えられずにいた。
「・・・美味しいです」
カツ丼をの一部分を一口頬張っただけで、深刻な表情をして喋らなくなったせいか、空気が張り詰める。それを察して、慌てて本音を吐くと一瞬にして元に戻った。
「変わらず、美味しいです。アイツにも、伝えておきますんで」
ちょっと遠い場所。
そのちょっとの加減を表すのは、かなり高難度である。
足を踏み外せば、そのちょっとという距離がすぐに縮まる。全てが自己責任で、別に富裕層に監視されている訳でもないのに、鉄骨の上は怖い。
ちょっと遠くて、割と近くて、誰もがその場所へ到達する可能性があり、きっと孤独。この鉄骨からわざと堕ちれば、すぐに会える。彼らの孤独を解消させる事が出来る。話す事が出来る。笑い合う事が出来る。・・・・・・謝る事が、出来る。
「ごちそうさまでした!いやぁ、久しぶりに食べたけどやっぱ美味しかったぁ」
満面の笑みで、満腹加減をお腹を叩いて伝えれば、おっちゃんは喜んでいた。「ではまた!」と代金を無造作に置いて手を振り、そそくさと戸を開くと。
それを追いかけてきた、フカヒレくん。
フカヒレ「あのさ」
「うん?」
フカヒレ「俺は別に、一緒に行っても良いよ」
「・・・何が?」
フカヒレ「その、ちょっと遠い場所、とかいう所」
財布のチャックをジジジと閉める私の指を、綺麗にすくい取って握り締めた。「アンタとなら」そう言って目を合わせたフカヒレくんに、何を言うべきか悩んだが「どこでもドアが発明されたら、ね」と笑ってみる事に。
フカヒレ「・・・え?」
「私、移動時間が好きじゃなくてさ」
フカヒレ「目が、泳いでるよ」
「海だから、そりゃ泳ぐよ」
振りほどいた為にすぐさま出来た指の隙間に、風が吹いた。
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堕天使(プロフ) - 伶花さん» ご指摘ありがとうございます。しれっと直しました、感謝します! (2018年4月12日 7時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - しおからさん» 酢だこ食べる時にまでタコ男を思い出してたら、たこ焼き食べる時も美味しくなくなっちゃいますから適度に忘れることをお勧めします(おい)ギャグ、本当に楽しいです! (2018年4月12日 7時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - 総悟LOVEさん» お久しぶりです!返信遅くなりました…。ミンミンと桃太郎のギャグ絡みを書いていても多少の物足りなさを感じています。タコ男はいずれ出すつもりですのでそれまでお待ちください()べるぜバブ面白いですよね! (2018年4月12日 7時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
伶花(プロフ) - 3277話、(名字 になってますよ (2018年3月29日 9時) (レス) id: 3b42b7a1cb (このIDを非表示/違反報告)
しおから - タコ……なんか切ないです。酢だこ食べる時とか…シリアスもお上手でしたけど、やっぱりギャグが面白いですね! (2018年3月28日 23時) (レス) id: 1423f5ea5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:堕天使 | 作成日時:2018年3月6日 23時