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「...んでさ、あの人とはどんな感じなの、」
「あの人って？」
「お前珍しく顔見て話してたじゃん、こないだ」
え、知ってたんだ。なんて考えるより早く顔を上げてしまう。...目の前では何か友達がニヤニヤしている
「なんだよその顔気持ち悪いな」
「気持ち悪ぃとか言うなよ。めっちゃ美人だったろ、あの人」
「美人て。男に使う言葉じゃねぇだろうよ」
「あ、あの人男なの？」
「男だよ。...普通に声が男だったよ」
「へぇー。...で、どこが好きなの？」
「は？好きじゃないよ。俺にそんな趣味ないよ」
「ふーん。あの人お前の近くでよく見るからてっきり仲良くなってんのかと思ってた」
「...そうなの？」
本人は5回目だとか言ってたけど、俺が初めましての気だったせいで、あまり馴染みがない。
「あの人めっちゃ口動いてたから多分お前と結構会話もしてたはずだよ。...気づかねぇのやばくない？」
酒が進んで饒舌な彼が、普段より大袈裟に笑う。
「いやぁさ...俺金稼ぎに行ってるから、別に好きでやってるわけじゃないし...」
酒さえ正確に作っていれば、あとは話しかけられてそれに応じていれば。この仕事は問題ないはずだ。そこにプラスアルファしていくのはそれが好きな人なんだろう
...無論、俺はバーもそうだし夜のそういった世界に無関心なもんだから。いかんせん応用編を実践する気にはなれない
「お前本当にドライよな。そういうとこで友達作っていきゃいいのに」
呆れた物言いをする樹に、俺は返す言葉もない。おそらく、このやりとりは俺の負けだ。
仲の良い友人との会話ひとつとってもこんなことをうだうだと考えているのだから、これ以上煩わしい自分を再確認したら、...考えるだけでも怖気がする
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年8月3日 22時
