...24 ページ24
「なんでですか、」
「うーん、北斗くん夜職なのにちゃんとした雰囲気めっちゃ出てんだよ。俺なんか...バカばれちゃいそうでやなの」
酒飲んでバカなのはみんなおんなじじゃん、というのが大我さんの理屈らしい。わりと的を射てる気もするけど、シラフがバカな人の酔い方には思えないけどなぁとか。仕草ひとつとってもそうだ。この人はすべてが、丁寧に思う
そして店内の雰囲気はずっと薄暗い。
アルコールは要らないけどこの空間を愛してやってくる人もいるわけだから
特段気にする必要はないよ、と相手と仲がよければ言ったかもしれない
「とりあえず一杯飲んでみますか?」
「うーん...バカでも引かない?」
どうやら俺側が大我さんのことをバカでも嫌いにならなければ飲むらしい。なんだそれ
「大丈夫です。」
「...じゃあ飲む」
えへっ、と笑った彼を可愛いと思ったらおしまいだ。この可愛い顔した悪魔を、愛してしまったらおしまいだ
そう自分に言い聞かせ、俺は一般的にはアルコールを含んで作られるそれを、グレープフルーツジュースとクランベリージュースだけで混ぜた。
「バージンブリーズです。」
「...なに、俺のこと女だと思ってる?」
提供されたそれに、少し怪訝な顔をする。
「いえ。れっきとした成人男性だと思ってます」
無理はない、このカクテルは主に女性向けに出されるものだ。綺麗なピンク色をしている。...でも、さっぱりとしていて飲みやすい。俺から見た大我さんそのものだった
カクテル言葉のようなおしゃれなものはほんの一握りしか知らない。でも、バーテンダーの端くれとして適材適所の酒は出せるつもりだ。俺がチョイスしたそれだから、黙って飲んでほしい...なんて言葉は、そっと飲み込んだ
「...おいし」
彼は少し口角をあげ、それからこちらを見た
772人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「松村北斗」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:向日葵 | 作成日時:2022年8月3日 22時