...14 ページ14
.
働きたくない。働きたくなすぎる。入った瞬間そう思った。
バーは、静かでそれでいて余裕のある大人がやってくる場所だと思っていたからなんとかやれてたのに
「これもっかーーーい!!!」
馬鹿でかい声が耳をつんざく。あれ、ここクラブかなんか?
「...マスター、今日これどういう状態ですか」
バックルームに入って、たまたまそこにいたので訊ねる
「あぁー、今日ね、貸切。俺の知り合いの会社の二次会」
「そうですか...」
「そんな、あからさまに落ち込まないで」
いや落ち込むだろ、すさまじく落ち込むよ。"女の子ほぼ居ないから安心して" じゃないし、大人数の陽キャに絡まれるなんてエレベーターで40階から急降下するくらい、それ以上に不愉快というか。心の平穏を乱されるような、そんな感覚
「おい北斗、行くぞ」
着替えたまま意気消沈している俺に、勢いづいた樹から声がかかる
そうだ、ここは彼の晴れ舞台みたいなもんか。今まで休みの日を聞いてからそれに被らないようにシフトをだしててよかった。
「樹...今日は頼むよ」
「なんだよお前、陰気モード発動しちゃったの?」
"大丈夫だよお前だったら、いつも通りやりゃいいんだから"
言い終わるより先に、フロアへ消えていく樹の背中に
頼もしさを感じながら後を追った
772人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「松村北斗」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:向日葵 | 作成日時:2022年8月3日 22時