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「...てことがあってさ」
「お前ぇ!それはさぁ!」
"好きになっちゃってんじゃないの!"
数日後。仕事先の近くにあるチェーン店で晩飯という大義名分を掲げ、樹に話を聞いてもらうことにしたら、相槌に混ざって想定外の言葉が返ってきて。俺はごはんを喉に詰めかけた
「えっ、...待ってでも俺下の名前しかしらないし相手がどこに住んでてどんな人でどの仕事してるとか知らないし、」
「しゃべんの早いなぁ...それが答えだべ?」
樹は何がそんなに愉快なのか、俺を指をさして楽しそうにする
「...なんではやいのが答えになんの?」
「お前昔から好きなことの話になるとめっちゃ話すスピード上がるじゃん」
...なるほどまぁ、
「そういう考え方もあるかぁー...」
「北斗に関してはそういう考えしか浮かばないけど。少なくとも俺はね」
「でもさぁ、俺男じゃん...向こうもいくら綺麗とは言っても男だよ?」
しかもあの遊び慣れてる感じ。酔っ払ってへらへらして絡んでくるあの感じが、俺にはない感覚すぎて怖い。絶対あっちでもこっちでもやってるやつじゃん。恐ろしすぎる
「でも今の時代はほら、そういうマイノリティの人も生きやすいんだし、...いいんでない?」
「よくない。なにもよくない。ぜんっぜんよくない」
「そんな頭ブンブン振るなよ...いいじゃんお前顔も良いんだし、いけるよ!」
「それはいけないよ俺...」
陽キャの"いける!"ほど怖いもんはない。俺は学生時代に嫌ってほど経験した。陽キャはいけても暗キャはいけない、そんなことが腐るほどあることを陽キャは知らない。し、無論こいつは陽だし俺は陰で、その"いける!"が一致するわけがない
うーん、どうするべきか...なんて考えていると、肩をぱんっ、と叩かれて
「またなんか頭ん中理屈こねくり回してんだろうけど、なんかあったら相談してこいよ」
「うん、ありがと」
...これだから陽キャは。いつもそうだ、しょせん陽キャ陰キャとか...向こう側は気にしちゃいないんだよな
「ほら食ったらさっさと出勤すんぞ!」
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作者名:向日葵 | 作成日時:2022年8月3日 22時