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地下暮らしページ3

「ドス君ってさぁ、若しかして、24時間365日寝ないの？」

「何を言っているんですか貴女は。ぼくだって寝るに決まっているでしょう。」

暗く、機械の光しか光源の無い地下室。
部屋に置かれた時計は午後4時を指しているが、もう長い間この地下空間に居た所為か、既に私に昼夜の感覚は無かった。

だが、朝からずっと機械に向き合って未だ其処から離れない……頭領の姿を見ていれば、流石に疑問にもなるだろう。

__この男は、一体何時寝ているのだろう。余り睡眠を取っている様子を見た事が無い。

そんな疑問を、暇潰しを兼ねてぶつけてみたところ、返ってきたのは意外と普通の答えだった。
てっきり、彼の事だから流されるか、無視されるかだと思ったのだ…。

「ほんとに〜？ドス君が目瞑ってるとこすら、ボクは想像出来ないよ！一寸、瞑ってみて！」

「一寸って、ぼくはまだやる事が…何するんですか貴女。」

キーボードを打っていた彼の手を、後ろから素早く掴めば、作業を中断された彼は、振り向いてジト目で私を見上げた。

彼に見つめられること等、滅多に無かった私は、その深くそれでいて綺麗な紫色の瞳をジッと見つめ返す。

まるで珍しい宝石を目に焼き付けるかのような、そんな気持ちでもあった。

暫く無言で見つめ合ってから、ふとこの状況に我の返った私は、先にドス君から視線を外す。

具体的には、素振りも予兆も無く、思い切りドス君の首元に両手を回し、ドス君に抱き着いた。

彼は表情1つ変えず、顔に当る髪の毛を鬱陶しがって、顔を少し傾けただけだ。

「…予測済み？ちぇ」
「えぇ、まぁ。」

割と耳元で聞こえた、低い、ちゃんとした男性の声は、何だか何時もとは違うように感じる。

「いつ…終わるの？其れ」

ジッと機械の画面を覗き込んでみたが、私には訳の分からない、表示ばかりが有った。
街の防犯カメラを映し出した様な、そんな映像も。

「今日はもう止めます。近侍長に紅茶でも淹れて貰って、二人で飲みましょうか。」

「えっ、ほんと！？やった！じゃあ、ゴンチャ食堂に呼んで来る！」

思わぬ言葉に途端に嬉しくなった。だって、最近は中々そんな時間が無い。
笑顔で部屋を出て行く私に、ドス君は「転ばないで下さいね」と振り向かず云った。