第 伍 幕 ページ2
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炭治郎side
「ぁ、今日もある」
窓枠に置いてある花瓶。そこには真新しい花がいけてあった。
最初はアオイさん達がしてくれたのかとお礼を言ったら身に覚えがないと返された。
その花瓶からは花の香りに混ざって仄かに
『A姉さんの匂いだ』
お館様と柱の前で助けてくれて以来全く会えていないA姉さん。
血の繋がりはないけど、俺と禰豆子の大切な姉だ。
そして、俺の……。
しのぶさん曰く、姉さんは怪我をしないから蝶屋敷に来ることはほとんど無いらしい。
確かに姉さんは俺たちより怪我の治りが早い。
だからか無茶をすることも多くハラハラした時もあった。
もう一つしのぶさんから聞いた、姉さんは俺たちのことをずっと探していたみたい。
同じ任務についたら鬼のことより先に俺たちのことを聞き回るほどに。
それを聞いた時は嬉しかったしちょっと恥ずかしかった。
なのに……なんで今は
「なんで、会いに来てくれないんだ?」
本当は俺から会いに行きたいけど怪我してるからここから出られない。
この花だって、夜 俺が寝静まってから変えていくし、実質会えていない。
避けられているようにしか見えない。
なんでなんだよ、姉さん。
悶々と考えている俺を善逸は意味ありげに見つめていたとか。
次の日から、しのぶさんの指示により機能回復訓練が始まった。
毎日ヘトヘトで病室に戻ってきてもすぐに寝てしまう始末。
姉さんに会える日は遠い、かも。
善逸が何か叫んでいる。けどごめん、すごく疲れたんだ。ちょっと、眠らせて…くれ……。
俺は、訓練の疲れからか深い眠りについた。
炭治郎side 終
善逸side
「ちょっとちょっと!炭治郎そりゃ無いよ!?」
俺ももうすぐ同じことすんのに何するか分かんないって恐怖よ!?死んじゃうよ俺!?
ベッドに倒れ込んだままピクリともしない炭治郎と伊之助に、諦めた俺は喚くのを止めた。
「………寝ちゃいましたけど」
『みたいだね』
窓枠に座るひとつの影。女の人だ。しかも可愛い。
どこか陰のある笑みを浮かべた彼女が見つめる先は、炭治郎。
その優しげな眼差しは恋なんて安っぽいものじゃない。
音がそうじゃないと告げているんだ。
『キミがあんなに声上げても起きないなんて、よっぽど疲れたんだ』
微笑みをそのままに、傍までやってくると炭治郎を軽々と抱え仰向けに寝かせる。ちゃんと掛け布団もかけて。
伊之助にも同じことをしてくれた。
この人優しい。
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