なんとなく ページ9
＋
『これが“ 犬 ”』
「いぬ？」
今日は休日
朝食も終わり特に予定も無かったので弟の恵と影絵の練習をしていた。
ドゥルンと影から飛び出してきた玉犬 黒に恵は怖がるどころか楽しそうにはしゃいでいる。
さすが。
───ッカシャン！！
突如聴こえた食器が割れるような音。
キッチンの方から聞こえたそれに私は反応した。
『お母さん！大丈夫？』
洗い物をしていたらしい泡のついた手のまま床を見下ろしている母。
「私は大丈夫よ。でもまいったなぁ」
パパのお茶碗 割っちゃった。
そのまま拾おうとしたので私は慌てて静止をかけ用意したホウキとチリトリでそれをかき集める。
「ありがとう」
『ううん、怪我はない？』
再度 大丈夫と返事がきたことで安堵の息を吐く。
「んー、パパが帰ってくる前に新しいの買わなきゃ」
だがしかし、主婦の仕事は多い。
直ぐに買いに行くことは難しいだろう。
なら
『………私 行ってこようか？』
「いいの？助かるわぁ」
ということで、出かけます。
＋＋＋
なんとなく外に出る理由が欲しかった。
1人で出歩くチャンスなんてなかなか無いし、それに
『嫌な予感がする』
家には一応 玉犬 白を置いてきたし大丈夫だろう。
なのに感じる拭えないナニカ。
それを確かめるために、私は外へ出たかった。
ふと山の方に目を向けた。
あの方向に高専の建物があったはず。
高専といえば、今の五条先生ってまだ高専生なんだっけ。
ふと頭に浮かんだ過去の担任の顔。
といっても普段は目隠しをしているため素顔を見ることはあまり無い。
はっきりいって不審者だった。
歩道の横の線路を電車が横切っていく。
風圧に押されて髪が乱れた。
隣で玉犬 黒が身震いをしている。
大きくなったなぁ。
これ もの○け姫みたいに乗れるぞ。
ふと、格子越しに見えた駅のホームに
見覚えのある人物を見つけた。
『あれは、父さんと……』
確か仕事仲間の人だった気がする。
あの二人がセットってことは、もしかしてまた危ない仕事だろうか。
『ｯ！』
嫌な予感が悪寒とかって背中を伝う。
思わず身震いすると案じるように黒が鳴いた。
私は 考えるよりも先に足が動いていた。
＋
今、貴方に会いたくはなかった ※少し血の表現あり→←最近の私
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