虫の知らせ ページ4
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『【玉犬】』
両の手で犬の影絵を作ると、己の影からぬるりと白黒の犬が2匹 現れた。
『子犬だ』
子どもだから顕現されたのは記憶のそれとは程遠い小柄な2匹。
ちょこんとおすわりをする姿は愛らしく無心に尻尾をふる姿は加護欲をそそられる。
触れてみると……うん、モフモフだ。
「初めてにしちゃあ上出来だな」
そう言って私の頭をガシガシと撫でる。
『痛い』
首がもげる。
「……」
指摘すると撫でるのをやめた。
少しもの寂しい気がするが黙っておこう。
「これは術式っつってな」
コイツは見えるヤツと見えないヤツがいんだよ。
『……ユウレイみたいな?』
「ぁー、まぁ似たようなもんだ」
説明省いたな。
弟が生まれ、母の目が離れることが多くなったのを見計らって私は思い切って父に問いかけた。
お父さん。
“ 私しか見えないアレは何?”
父は私が指さした場所に目を向けながら無言で己の顎を触る。
そして、次の日にあたる今。
家のリビングで呪い講座が始まった。
産後の母たちはまだ入院中である。
いきなり術式使うってどうなんだろうか。
普通“ 呪いとはなんぞや ”からだよね?
この人教えるの下手なの?
私は、玉犬の白のモフモフを堪能する背中に無言の圧力を向けた。
気配には敏感なようで直ぐに気づかれたけどね。
わん!
『ぉお』
2匹は私の服の裾を咥えて懸命にひっぱっている。
何やら興奮しているように見える。
「どうした?」
『白と黒が私の服を引っ張るの』
小さくもやはり式神だ。
ひっぱられ足が勝手に動いてしまう。
それを見ていた父は私の脇に手を差し込み抱き上げた。
白と黒は私の服を離しこちらを物言いげに見上げている。
「玉犬は探知が得意だ。なんか見つけたんだろ」
教えろ。
意思を察したのか、白と黒は背を向けて駆け出した。
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