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いつからか俺は最低で最悪な奴になった。
姉の事が憎い。
俺には持ち合わせていないものが全部、姉にはあるから。
両親からの期待と信頼。
いつだって自分のすきなように、好きなことをして生きている姉がどうしようもなく憎い。
『行ってらっしゃい』
海「行ってくる」
肩に背負わされたスクールバックには勿論俺が目指した名前は刻まれていないし、この新調した制服にも同じ事が言える。
俺の人生は何もうまくいかない。
というかそもそも俺には夢というものがない。
自分が何になりたいとか、どんなことがしたいとか。
姉のように誇りを持ってそういえるものがない。
第一志望に落ちてこの学校に来た今、未来の自分の姿なんてますます想像もつかなかった。
『なあ海人、ノートみして』
海「いいよ。」
高校は、俺が何をするでもなく上部の友達が勝手にできるし、変な話俺もその薄っぺらい関係に安らいでいるんだから都合も良い。
本当の自分はこんな奴じゃない。
筋違いもいいところに姉を憎み、妬んで、頭の中でいつも誰かを小馬鹿にしていないと成りたっていけないような、そんな奴。
それを誰にも知られないように自分の中に塞ぎ込んでいる。勿論、両親にもだ。
海「....大丈夫?」
だからあの時は迷った。
彼女に自分から声をかけるかどうか。
いつの間にか開いていた口がそう聞いていたけど返事がなかったからもう一度呼んだ。
海「大丈夫か」
「...あ、高橋くん」
俺の顔を見ると質問には答えず俺の名前を呼んだ成瀬さん。
様子がおかしかったから声をかけたというのに彼女は案外あっさり笑顔を見せていた。
けれど彼女の右手はやっぱりお腹のあたりをさすっているから具合が悪いのは確かな筈のだ。
海「苦しそうにしてたから」
「え、そう?元気だよ」
海「嘘つき。じゃないと俺が声かけたりするわけないじゃん」
わざわざこんな道中で。
前方にあんなに苦しそうにお腹を抱えている人がいて今にも倒れてしまいそうなのに、仮にも同じクラスの俺が見捨てられるわけないだろう。
そう、俺はきっと彼女じゃなくたって声をかけた筈だ。
「...秘密にして。誰にも」
海「何を?」
「今の話。今私が高橋くんに助けられた話」
助けられた、のか。
俺は声をかけただけで何もしていないけれど。
海「もう平気なの」
「うん、おさまった。高橋くんのお陰!」
屈託のない彼女の笑顔が羨ましかった。
その瞬間に、俺の邪悪な心が少し浄化されたのだって事実だ。
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作者名:ふる | 作者ホームページ:http://twitter.com/ei_njo
作成日時:2017年10月7日 15時