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どんなに自分が努力をして、
どんなに己を磨いたとしても
他人から認められない事なんてざらにある。
欲張りな事は言わないさ。
だけどただ一人。
わかってくれる人がいるならそれでいい。
君は、驚く程強いね。
だけどとんでもなく脆くもあるから。
やっぱり俺と君は似ているよ。
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夏が始まろうとしていた。
定期考査が終わった。
俺の伸び悩んでいた成績は少しあがった。
彼女の成績はもっと上だった。
「休みだぁ」
此処から約1ヶ月の間学校がなくなる。
それはつまり彼女と俺の秘密の朝の時間もなくなるということだ。
廉「成瀬、夏休み暇?」
「え、うーん。」
別に俺は彼女の恋人でもなんでもないのに
この1ヶ月の別れに耐えられないと言うんだから彼女からしたらいい迷惑かもしれない。
どうみたって一方通行で勝算なんてものわからない。
「夏休みはね、多分、海外にいくの」
廉「えっどこ?どこいくん」
「アメリカ?スイス?あ、ハワイ?」
廉「ハワイはアメリカの領土やで」
「あっ、そっか。」
そして彼女はわかりやすく嘘つきでもあった。
きっと海外に行くなんてのも嘘。
彼女の嘘はきまって可愛らしいものばかりだから俺は構わないのだけれど、どうして嘘をつくのかはわからない。
わからない事が多すぎる。好きなのに。
廉「成瀬、好きな人はいないの?」
だから思い切って今日はこれを聞くと決めていた。
その為に、昨日の内からイメトレもしたし今日の朝だって気合を入れて髪の毛をきめてきた。
「いるよ。お母さんとお父さん。」
確かに、好きな人か。
だけど俺が聞きたいのはもっとこう、そう。
前に彼女も言っていたJKっぽい答え。
○○くんがかっこいいだの優しいだのそういう類のやつだ。
廉「...違くて、例えばなんやろう。ほら、胸が締め付けられる形の...その、だから...恋の話」
俺は君と恋の話がしたいんだ。
そう、それが言いたかった。
「胸が締め付けられる系か...」
彼女はそう、ぼそりと呟いた。
長い髪の毛を耳にかけたあと、また口を開く。
「胸が締め付けられるような事なら沢山あるよ。
だけど、それが恋なのかはよくわからない」
自分でその話を促したというのに、なんて言葉を返せばいいかわからなかった。
そもそもこの話の着地点なんて考えてなかったし、突発的な衝動からだったし。
暫くしてチャイムがなった。
それが今学期最後だった。そこから一カ月。
俺が彼女の声を聞くことはやっぱりなかった。
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作者名:ふる | 作者ホームページ:http://twitter.com/ei_njo
作成日時:2017年10月7日 15時