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とん、と靴音がして、どこかの屋上にたどり着く。
ここは、この屋根は見たことがある。穴だらけでわからなくなっていたけれど、自分の学校の校舎くらいはなんとなく覚えている。特徴的な青色の破片と、その下でぐちゃぐちゃの惨劇に成り果てた体育館が視界に映ってから、私はあわてて視線を別のものに移した。
「……えっと……」
私、どうなったんだっけ。誰かに殺されて、何も知らないって叫んで、そこから……。
時間をかけて思い出そうとする私に、あの子はただニコニコと笑いかけるだけだ。彼女は……確か、名前は。
「……シエラ、さん?」
「大正解! 改めまして、ボクの名前はシエラ。面白くて、楽しい事が好きな”悪魔”さ!」
にしし、といたずらっ子のように口角を上げて、眉を八の字に下げる。私とは正反対の、サラサラな黒髪ロングが風に吹かれた。背中には明らかに人間ではない”翼”が生えているし、横髪で見えなかった耳はゲームのキャラクターみたいに尖っている。見た目はたしかに小悪魔っぽいけど……。
「……ん? 悪魔……?」
「そうだよ!」
「悪魔って、あの悪魔……?」
「よくわからないけどその悪魔なんじゃない?」
「で、デーモン……?」
「そうとも言うかも!」
ねえ、と同じ顔で彼女は問いかける。
「君の名前は?」
「えっ……さ、さっき知ってたよね……?」
「それはそれ、これはこれ! ねえ、教えてほしいな!」
「……私の名前は、奥宮カナデ」
この学校の生徒だった。
そう言おうとして、悪魔に学校の概念が通じるのか、とためらってしまう。悪魔への自己紹介って何を言えばいいんだろう。年齢? そもそも悪魔に年齢って関係あるのかな? シエラさんに何を伝えたらいいんだろう。わからなくて戸惑っていると、彼女はまた「にしし」と笑う。
「そんなに緊張しなくてもいいんだよ? ボクとキミは文字通り契りを結んだ者同士なのだからね」
「契り……あっ」
契約。
そういえばそんな話をしていたような。でも具体的な事、何も聞いてなかったな。どう聞こうか悩んでいると、彼女の方から「ああ、これから説明しようか」と提案してきた。
「どうせ話は長くなるんだ。ゆっくり今の状況を確認しよう」
「……う、うん」
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