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「んなァﾞ……」
ぐるぐると目を回して、大の字に広がっている。
その姿は獣っぽいけれど、人間のような顔立ちをしている、あきらかに人間じゃない生き物だ。
「なぁに？ なんか見つけた？」
「あの……今、茶色いねこちゃんみたいなのが……」
「……ネコ！？ そこにいるんだな！！？」
「うわっ」
突然の大声に振り返れば、さっきまで気絶していた森永くんが上半身だけ起こしてこちらに進もうとしている。止めようとしたけれど思っていたより移動の速度が早い。腕の力と根性で、私が開けた扉の先へと進んでいく。
その勢いに思わずぽかんとしてしまった。
「ガーナ！」
「み、耳がぁあ〜……おんの、耳、ないなった……に……」
「何いってんだよ、まだあるだろ！ ちゃんと頭についてるじゃねえか！！」
「……今どういう状況？」
「わ、分かんない……」
いつの間にか私の後ろにいたシエラに、もはやなんと言えばいいのかわからなくて。
うしろで口元を抑え肩を揺らしている九条さんと、手を叩いて喜ぶゼットさんも、笑うことに忙しすぎてなにも答えてくれなかった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
耳をまだ抑えてぐりぐりと回す、ネコちゃんみたいな”悪魔”。
それをあやす同級生――森永メイジくんに、ただ穏やかに微笑んでいる九条カノンちゃん。
教室に備え付けられている掃除用具を一本一本見てその汚さに笑うゼットさん。
お互いに同じ空間にいるけれど、声を掛け合う事はしていない。本題に入るべきか、少し悩んでシエラの方を見る。彼女は、教卓の上に腰を下ろして、ゆらゆらと脚を揺らして遊んでいた。
急に賑やかになったな、と思うと同時に、まだ二人しか人に会えていない事に気がついてしまう。その他人と呼べるものと言えば……。
「ところで」
嫌な思考に入るより前に、ただニコニコしているだけだった九条さんが口を開く。
「二人も、生き返らせてもらったの？」
「……いきなりかよ」
「いいじゃん。何も話さないよりはマシでしょ？」
「それは……そうだけど」
丁寧に箒をしまい、扉を閉める音がする。
今ガシャンって外れた音がした気がするけど大丈夫かな。
「お二人さんも何か未練でもあったぁ？」
「……」
「ちょっとぉ、俺だけ仲間はずれにするのはひどくない？ ゼッきゅん悲しい〜」
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