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「この世界は終末を迎えた」
「……しゅうまつ？」
こつこつと、見慣れた廊下に靴音が響く。ここに人はいなかったのか、まだ比較的きれいな状態で残されている。
「ボク達悪魔にはなぜ、どうしてこのタイミングで終末を迎えたのかは分からない。終末の時を決めるのは神と、その使いである天使達の意志だ」
「……つまり、その天使とか神様が、こんな風にしたって事？」
廊下の窓に視線を向ける。いくつもの黒い煙が上がり、街の至る所に赤色が点々としていた。当然のようにすべてが崩壊し、面影も残っていない。
「そう。ボク達悪魔は、天使や神が行ったこの終末に納得していない人類……キミのような人達の声を聞き、干渉を始めた。
キミが強く、変わりたいと願ったあのときのことさ。
ボク達悪魔は人間の強い思いに反応する。人ならざるモノ達の中で、一番人間を理解している。だから……よいしょ」
「？」
ぴょん、と軽やかに飛び跳ねる彼女に視線を向ける。
何か見つけたのだろうか。窓から視線を外すと、シエラさんは瓦礫を退かして、誰の物かもわからないカバンを引っ張り出した。あきらかに誰かの通学用カバンだ。その中から明確に彼女は何かを取り出す。
飽きるほど見た、白いセーラー服。私の学校の生徒が着る、ちょっと古臭いデザイン。奇跡的に汚れも少なく、私が着ているものとサイズは同じだ。
「ボク達、仲良くやれると思わない？」
シエラは、制服を差し出したまま、にっこりと笑みを浮かべる。
そこで初めて自分の服がボロボロだったことに気がついた。結構お気に入りの服だったのに。
「……分かんない」
「どうしてそう思うの？」
「私、誰かの物を盗んで生きるほど図太くない」
差し出された誰かの服を見て見ぬふりをして、シエラの前を歩く。どこに行くのかなんて決めていないけど、勝手に足が動く。
「ウソは良くないよ、カナデちゃん」
「ウソなんてついてない」
「悪魔はね」
突如、黄色と青の瞳が目の前に現れる。
「人と共に生きる生き物だから、理解はできなくても共感はできるのさ」
「……？」
「だからね。過去のキミがどれだけウソをつきながら生活していたのかも、ボクは知っている」
その服だって、メイクだって、髪型だって。何一つ自分で選んではいないだろう？
「そんな”ウソつき”から変わりたいと願ったのは紛れもない、キミ自身じゃないか」
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