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「なーんて、」
廉「付き合う」
「...え?」
廉「付き合おう。てか付き合って下さい」
反射的にそう答えていた。
少し前まで道理に合わないと思っていた事項だって
すぐに頭からかき消される。彼女に「付き合ってほしい」と言われたそのことだけでいっぱいになった。
彼女のことになると振り回されてばかりだ。
「...また迷惑かけちゃうよ?」
廉「...迷惑だなんて思わん。てか寧ろもっと俺のこと頼ってほしい。成瀬の力になりたい。」
成瀬は困った顔をして、「優しいね」と呟いた。
俺の目を逸らして成瀬の視線は窓の方へ向けられる。雨はまだ降り続けていた。
「私、もうすぐ死ぬんだよね」
彼女の言葉を聞いてふと思った。
彼女は何度向き合ってきたんだろう。
自分の病気に何度悩まされてきたのだろう。
彼女はどんな気持ちでそれを言葉にしたのだろう。
辛い。苦しい。逃げ出したい。
いいやもっとだ。
彼女が感じてきたものはもっともっと大きいはずだ。
そう思うと、ただただ自分が遣る瀬無くてたまらなくなった。
「永瀬くん」
廉「ごめん、」
「...私、最低なのに」
廉「もう何も言わんでいいから」
気がつけば成瀬を抱きしめていた。
何か言葉をかけるよりそうするのが正解だと思った。
成瀬の腕がゆっくりと俺の身体に回し返される。
そうして成瀬は俺の腕の中で泣いていた。
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作者名:ふる | 作者ホームページ:http://twitter.com/ei_njo
作成日時:2017年12月3日 18時