君と、恋の話がしたい。II (ページ5)

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海「なあ、永瀬」

昼休みになり俺が教室を出た所で高橋に捕まえられた。

彼女が目を覚まさない。
それなのに、此奴は随分と余裕があるのだなあと思った。
別にそれがムカつくとかそういうのではなくて。
ただ、部活も勉強も何も身に入らなくなった有様の俺とは大違いなものだなと。
こういう面でも賢い奴との俺みたいな凡人とではきっと違うんだろう。
どうしたって埋められない差、みたいなもの。
最近それをすごく実感する。

廉「なに」

海「成瀬さんの事、そんなに気にすんなよ」

きっとそれは他でもなく俺の事だけを気遣った高橋の優しさなんだろう。
俺があんまり落ち込んでいるから。
まるでそうなるべき公式でもあったかのようにあからさまに落ち込んだ俺を可哀想だと哀れんだんだろう。

廉「...優しいのな、おまえ」

海「ねえ、何か変だよ永瀬。」

廉「...はあ。うん、わかっとる。」

海「きっと大丈夫だよ。意外とあっさり目覚ますって。成瀬さんってそういう人だろ」

廉「そうかもなぁ」

海「そうだよ。しっかりしてよ」

俺自身もそう思った。
このまま目を覚まさない彼女より、案外けろっと元気を取り戻す彼女の方が想像しやすかった。
けれど、それが怖くもあった。

廉「俺、阿保やから。今まで成り行きだけで生きてきたからわからんことがいっぱいありすぎて。正直今もあんま頭回ってなくてどうしたらいいのかわからん。」

海「うん。そんな感じだよね。見た限り」

廉「....おまえってさ、正直でええよな」

海「俺は永瀬の阿保な所が大っ嫌いだったんだけど最近は羨ましくて仕方ないよ」

廉「....えっと、それは褒めてんの」

海「褒めてるよ」

高橋が笑った。
初めて見た高橋の笑い顔に訳もわからずつられて笑ってしまう。

海「俺も永瀬みたいにわかりやすく落ち込んでみたいなって」

廉「へ？」

海「これでも結構落ち込んではいるつもりなんだけど、わかりにくいでしょ？」

廉「....おん。全然こたえてないのかと」

海「結構強がってるからね」

高橋ってなんか。
なんかこう取っつきにくい奴だと思っていたのに。
いつも誰かを見下す様な眼差しが凄く苦手だと思っていたのに。

廉「海人」

海「へ」

廉「俺も廉でええから」

仲良くしたい訳ではないけれど、別に嫌いじゃないなって。
あんま好きでもないけど。

だけど、いい奴だなと思った。
困っている人を放っておけない誰より優しい奴なんだなぁと。