泣き虫ピエロとの約束 second (ページ1)

今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:4,201 hit

ⅴⅹ ページ1

彼女、嫌がってますよ

『…⁉』

聞いたことのある声だった。でもこの状況だからか、上手く思い出せない。

だけど、

この安心する声

「まぁ、とりあえず離しましょうこの手」

さらに掴まれた手。

思い切って目を開ける。

『…⁉ こーちゃん…』

羽奈の蚊が鳴くような声は、横を通ったバイクに完全に掻き消された。

｛あんた、誰なんだよ｝

「あなたこそ誰ですか」

｛俺はこの子の上司だ。二次会に誘ってたんだよ｝

「そうですか。でもそんな風には見えませんでしたけど。二次会に誘うくらいで、普通ここまで壁に詰め寄りま｛うるさい！！お前何なんだよ！！｝

「僕ですか？僕はただ、ここを通りすがった者です。でも、どう見たってこの子が嫌がってたんで。人助けってやつですよ」

｛この子の知り合いじゃないなら、尚更お前には関係ないだろ！折角良い気分だったのに。台無しだよ！！｝

「良い気分だったのはあなただけでしょ。警察呼びますよ」

強い口調と“警察”というワードにビビったのか、高崎は文句を吐き捨てて去って行った。

『はぁ…』

スルスルと壁を伝い、膝からガクリと崩れ落ちた。

「大丈夫？羽奈ちゃん」

彼の、優しく包み込まれるような声が、羽奈の涙腺を崩壊させた。

『こーちゃん…』

「ん、とりあえず車行こ。な？」

号泣して目が真っ赤で、メイクもボロボロな羽奈を考慮してか、自分が着ていたパーカーを羽織らせてから、その後フードを被せた。