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この時計が動くようになれば、本当の意味で時が動き出して。
父がきちんと天国に行けたと思えるんじゃないかと思った、らしい。
「………じゃあ…好きにしてくれて…いいけど…。」
学校始まるまでに直りそうもなかったら、早めに言うね、と断りを入れて。
俺は、森山Aが持ち込んだ懐中時計の修理を始めることにした。
「…あ、その前に。」
「はい、」
「基本、俺は食事しないから。」
「……え？」
「俺が何も食べなくても、気にしなくていいし、キミは自分のペースで生活してくれればいいから。」
「あの、食事しないというのは、」
「そのまんま。生命維持のためだけに食ってるから、健康を損なわない程度に自己管理してる。」
「ぁの、田中少佐、それは、「少佐っていうなっつったろ。」あ、申し訳、」
はぁ、とひとつため息をついて、「わかった。名前で呼んで。」と告げる。
「敬称はあってもなくてもなんでもいーや、『少佐』じゃなかったら。」
ちなみに俺の名前は樹、と言えば、存じ上げています、と返ってくる。
「じゃ、それでよろしく。」
今、自分たちがいる部屋の隣にある空き部屋にAを案内して、自分は元の場所へと戻った。
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案内された部屋で壁にかけられた時計を確認する。
「………16時…。」
夕食までにはまだ時間がある。
部屋のまんなかに設置されているテーブルに、学校で使っているテキストとノートを出して、
私は勉強を始めた。
「………あれ。」
ふと気づくと、手元が暗い。
壁際は暗くて、時計が読めなかった。
「……もう、そんな時間…。」
思わずひとりごとが出て、立ち上がる。
近くにとった宿に向かわなければならない。
隣の部屋からは、時計を分解している音と義手から出る音、2種類のカチャカチャという音が聞こえた。
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作者名：月華
| 作成日時：2023年3月28日 1時
