たとえばここが、世界の果てでも (ページ17)

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そのまま、樹さんは話を続けて。

「最終的に戦争には勝ったけど。顔の筋肉滅多に使わなくなっちゃって。」

笑顔の作り方も忘れた、と言いながら、いつものように微かに口角を上げた。

薄暗くなった部屋で、樹さんがランタンに灯をつける。

また、スツールに戻ってきて腰を下ろした。

「別に、怒ってるわけじゃねぇから。今更言うのもアレだけど。」
「…はい。」

私も、表情を和らげた………つもりだった。

すると。

「……お前も、笑顔作んの、ヘタだね。」

そう言って。

金属製の、少し冷たい右手を。

私の頬に添えた。

「………私は……、」
「…………ん…？」
「父を亡くして……その後、母も亡くしました。」

視線を樹さんに向けると。

「…それ、話しても大丈夫…？」
「…え…？」
「俺が自分のこと話したからって、Aも話さなきゃいけないわけじゃねーよ？」

樹さんと視線が絡まって。
添えられたままの右手の、親指がそっと頬を撫でた。

「大丈夫です、聞いてほしいんです。」
「…わかった。」

樹さんの右手が、テーブルの上に戻って行った。