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私の息子の話をしよう。

あの子が明確に変化したのは、ヴィルが生まれた頃だったと記憶している。
感情を表に出し、表情豊かに、年頃のままに振舞い出したのだ。
そのあまりの変わりように何度、自分の目を疑ったことか。

ともかく、あの子は良い方向に変わった。
亡霊のようにすぐに消えてしまいそうな危うさがなくなり、自我が芽生えた。

私はあの子の意思を尊重し、あれこれ口に出さず、やりたいことをやらせた。
やや離れたところからあの子と接していたため、冷たい父親と思われていたかもしれない。


先日、幼稚園に通い始めたあの子は行きたくない、つまらないと拒絶をした。
幼稚園から帰ってくる度、顔を曇らせていく息子を見ていたので、私の仕事に連れて行くことにした。

あの子に感謝を言われた時、目頭が熱くなり泣きそうになった。
生き人形と呼ばれていたあの子が頬笑みを浮かべ、虚ろだった瞳にはちゃんと私が映っているではないか。
子供の成長に今さら気付き、涙を堪える。初めて自分が役者だったことに感謝した。


次の日、あの子を連れて仕事へ行った。
見たことの無いモノばかりだったのか、あの子にしては珍しくはしゃいでいた。

そんな時、問題が起こった。
子役が病欠で出演が出来なくなり、あの子が代役を務める事になったのだ。

正直に言おう、あの子の演技に圧倒された。
大人でもあの演技が出来る役者は少ないだろう。あの子は初めてで、それをやってのけた。我が子ながら末恐ろしい。

紛うことなき、天才。

きっとあの子は将来大物になるに違いない。いつか親の元から離れ、巣立っていくあの子。

それまで、遠すぎて成長を見逃さないように、何かあったらいつでも助けてあげられる一歩引いた距離であの子を見守っていよう。


それが、父親としての役割なのだから。








とある父の契り

──ホワイトデー(次回更新時に消します)→←#05



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木犀 - まさに俺得…続き待ってます (10月29日 23時) (レス) @page7 id: 68b438f60e (このIDを非表示/違反報告)
あほ - 最高です!再新楽しみ!いつでも待ってます! (2021年6月4日 20時) (レス) id: 7787f6d795 (このIDを非表示/違反報告)
七夏(プロフ) - めっちゃ面白いです!続きを楽しみに待ってます! (2021年3月30日 19時) (レス) id: 716685a2fc (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - この話面白すぎます!私も去年受験生でした。焦らす深呼吸をし、自分の実力が精一杯発揮できるよう頑張って下さい!!陰ながら応援して居ます (2021年3月10日 17時) (レス) id: b3f6b0ccbc (このIDを非表示/違反報告)
冬猫(プロフ) - 楽しく拝見させてもらっています!受験って緊張しますよね、私も去年そうでした。でも、焦らず深呼吸をしてみたら少しは緊張がやわらぐと思います。受験頑張って下さい!応援してます!あなたの小説のファンより (2021年2月23日 1時) (レス) id: 1c44646dd9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゲイザーが美味しく焼けました | 作成日時:2021年1月12日 6時

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