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月とカーテンに揺れる旅人の姿 ページ20

ヒトエが消えて一ヶ月経った。

老人は幾分やつれたように見える。

ヒヨは悶々と考えを巡らせた。

老人は「ヒトエがこの街に必要だ。」と言った。

確かにその意味は分かった。

時計台、この街のシンボルの様なものだ。

名を名乗らぬ男が作ったと聞く。

時計台の十字に触れられるのは純血の狂戦士のみ。

その男が書き残した本に書いてあったのだ。

確かに普通の人間が触れようものなら電撃が走り抜けた様に体が吹っ飛んでしまう。


「十字に触れし狂戦士、その扉開かれん。

さすれば全てを知り得よう。

また会う日が来ることを望もう、純血の黒き狂戦士よ。」


全て、その全てが知りたくて。

老人はやっとヒトエという青年を『手に入れた』のだ。

フリードリヒという大佐もきっとそれを知りたくてヒトエに近付いたも同じだろう。

老人は笑っていた。

ヒヨはやはりこの老人は危ないと考えた。

夜、こっそりここから出ようと考えた。

ヒトエに会い、謝るために。

誤って許されるものではない、無論承知の上だ。


「ヒヨ、どこへ行くんだ?」

「部屋です。もう寝ますね、明日も早いので。」


部屋へ戻ると急いでランプを消して窓に手をかけた。

開かない。

どうしようもない恐怖と混乱がヒヨに襲いかかる。

扉が開く。


「どこへ行くつもりだ?」

「あ…」


この老人に手は出せない。

命の危機だというのに、情けない。

壁まで追い詰められる。

逃げ場は無い。

ふ、と。

カーテンが揺れているのに気付いた。


「初めまして、アンタがヒヨさん?」


揺れるカーテン、開けた窓、差し込む月明かりと人の影。

白銀虚は少女を見下ろしていた。

優しい目で、


「俺探してる奴が居てさ、そいつについて知ってるって聞いてさ。
ようやく見付けた。」


死ぬ訳にはいかない。

ヒヨは小さく、助けて、と言った。

虚は笑って応えた。


「爺さんが夜這いか?笑えねぇなぁ…」

「ありがとう、助かった。」

「レジスタンス…『Чистилище』、煉獄だっけか?
聞きたいことが山ほど有る。ここじゃあれだし、外行こうぜ。」


ヒヨはチラリとも老人を見ることはしなかった。

その目がぎょろりと動く。

境界の1歩手前→←白の歯車



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龍巳@キチガイ - 【 】nanashiさん» こわっ、てめぇ夜道には気を付けろよこの神文才野郎 (2017年2月9日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
【 】nanashi(プロフ) - 寄越せ。文才寄越せください。 (2017年2月7日 22時) (レス) id: 1572cb3dd0 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜のお外だいしゅきさん» 減るわやめろ (2017年2月7日 18時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
夜のお外だいしゅき - なぜだ。なぜくれない。いいだろう別に。お前の文才はちょっとやそっとじゃあ減らないだろう (2017年2月5日 21時) (レス) id: 2500df9be3 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜の空気を吸い隊さん» 名前に笑った、そして嫌だ (2017年2月5日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:龍巳@キチガイ | 作者ホームページ:ホームページの追加は禁じます。  
作成日時:2017年1月31日 16時

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