歯車は今、処刑台を彩める。 (ページ16)

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狂った国と逃げた男の話ページ16

僕がこの国に来たのは、丁度18歳の誕生日を二月ほど越した頃です。

話し始めはこうだった。

この国に来たのは…優しい友人が見逃してくれたからです。

でも、僕だけが逃げてきてしまった。彼は僕を嫌っている。

彼は優しい人です、不器用ですがとても人思いで…部下からの信頼も厚く、

独壱のような狂った国に居るには惜しい人です。

あの国はおかしい、そう気付いたのは僕が軍に入った頃でした。

徴兵制度の残る国ですが、僕は志願兵として軍部に加入しそのまま戦地へ赴き、

たくさん、ひとをころしました。

あの感覚は今でも残っている。

血腥くて敵わない。あそこは僕、嫌いです。

ある日、上の人が言いました。

「露亜へと進軍せよ。」

その時、露亜と独壱は和平条約を結んでから70年という輝かしい日でもありました。

なのにこの人は何を言っているんだろう。

露亜と関係を悪化させれば100年戦争が目前になります。

僕は反し、進軍せず身を隠しました。

さっき言った友人が食料を運んでくれました、そのおかげで生き延びられた。

そして、今の現状です。

露亜と独壱が戦争をしているのはあの上の人の一言です。

僕は、正しい判断をしたと自分では思っています。

優しい友人が切羽詰まった顔で入ってきた時、僕は死ぬ覚悟でした。

しかし友人は黒いマスクで顔を覆い、顔がバレないようにして、そのまま軍の人達を、

自分の仲間を殺したんです。

僕のせいです。

「______。」

あの時、彼は僕に逃げろと言いました。

僕は弱虫で何も出来ないので、逃げました。

彼を置いて逃げました。

彼は今、大佐という地位に就き、部下や上司から信頼される素晴らしい人になりました。

日常的には小さな子供の姿なのに、いざ戦場へ行くと彼は変貌してしまいます。

狂ったように、人を殺します。

彼がこうなったのは、僕の血を飲んだからです。

あの日、止めていれば良かった。

占い師が必死に止めている中、僕は呆然と彼を見ていることしか出来なかった。

僕は純血の狂戦士(バーサーカー)です。

他人の血を見たり、戦いの気配を感じると我を忘れてしまいます。

彼には、今僕の血が流れている。

どういう事か、分かってくれましたよね。