検索窓
今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:2,388 hit

大佐の歯車 ページ13

独壱、仏蘭の国境。

三つ編みの青年が独壱の国境に近付くと「やぁ!どうしたの?」と聞かれる。

青年は軽く、友達に会いに来たとだけ告げて其処を通った。

勿論本当だ、が…

彼は自分の事を友達と思っているか否かは定かではない。


オーベルシュタイン=リンク=フリードリヒ(おーべるしゅたいん=りんく=ふりーどりひ)は懐かしい顔を嫌そうに見ていた。

ヒトエは嬉しそうに彼に近寄る。

フリードリヒは冷たく逃げる。


「ちょっと、久々に見た友人にそれはなくない?」

「友人?お前と?…侮辱か?それは、」


辛辣な言葉にヒトエは悲しそうな顔をする。

フリードリヒはこの顔が大嫌いだった。


「お前が消えて何年になる。」

「さぁ?10年以上は経ってる事くらいしか…」


紫煙を燻らすフリードリヒ、珈琲を啜るヒトエ。

何も変わらない。

あの頃と同じだ。


「…今更、何をしに来た。」

「今更戻ってくるなんてないよ、ただ…」

「ただ?」


笑う、ヒトエは清々しいほどに、快晴の笑みを。

やはり、あの頃と変わらない。

フリードリヒはつくづくヒトエが苦手だと感じた。

それはずっと同じで、今も、きっとこれから先も…

ずっと変わらないと思う。


「ただ、君がどんな風になってるか見たくてね。」


痛々しく突き刺さる言葉にフリードリヒはヒトエを睨み付けた。

ヒトエは塀の上へ登る。

鉛色の空が重くのしかかる。

2人、あの頃は…

出会ったところは地獄だった。

天国にいるヒトエと、相も変わらず地獄にいるフリードリヒ。

奇妙な関係だった。


「あ、ここに居たんですね、探しましたよ。」

「部下さん?」

「まぁな。」

「ご友人さんですか?どうもー。」


人当たりの良い、柔らかい印象を与えるツインテールの女だ。

仕事の書類をフリードリヒに渡してさっさと立ち去った。


「じゃあね、また来るよ。大佐。」

「もう来るなよ、軍曹。」

「はは、そうやって呼ばれるのは何年ぶりだろうね。」


ヒトエは又、国境線に戻っていった。

フリードリヒは忠告として肝に銘じ、その場を後にした。

煙草は地面で燃え続けていた。

裏の鬼→←魔術師の歯車



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

龍巳@キチガイ - 【 】nanashiさん» こわっ、てめぇ夜道には気を付けろよこの神文才野郎 (2017年2月9日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
【 】nanashi(プロフ) - 寄越せ。文才寄越せください。 (2017年2月7日 22時) (レス) id: 1572cb3dd0 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜のお外だいしゅきさん» 減るわやめろ (2017年2月7日 18時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
夜のお外だいしゅき - なぜだ。なぜくれない。いいだろう別に。お前の文才はちょっとやそっとじゃあ減らないだろう (2017年2月5日 21時) (レス) id: 2500df9be3 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜の空気を吸い隊さん» 名前に笑った、そして嫌だ (2017年2月5日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:龍巳@キチガイ | 作者ホームページ:ホームページの追加は禁じます。  
作成日時:2017年1月31日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。