伍拾参話「ある夜」 ページ6
炭治郎side
ある夜の事。
俺は蝶屋敷の屋根の上で、静かに常中の練習をしていた。
隣にはしのぶさん。
何だかとても悲しい匂いをさせている。
ポツリ、ポツリとしのぶさんはお姉さんのカナエさんの事を話してくれた。
カナエさんは自分が柱になる前、上弦の弐と相対し肺を負傷し奇しくも引退したと。
上弦の弐……。
その言葉に、ゴクリと唾を飲み込む。
カナエさんはとても穏やかだけど、柱の人達の様にとても強い匂いがする。
そんな人が……。
上弦の弐は氷の血気術を使い、それを吸い込めば一発で肺が使えなくなるという正に初見殺しの技だ。
カナエさんは本当に死ぬ直前だった。
だけど、そこを謎の狐面を付けた隊士に寸前のところで助けられたという。
その奇跡が無ければ、カナエさんは今頃この世にいなかったという。
狐面という事で錆兎と真菰を思い出し、それとなくしのぶさんに聞いてみたが関連性は無いそうだ。
すん、と鼻を動かした。
怒りの、匂いがする。
懺悔の、匂いだ。
炭「…怒ってますか?」
し「──!!」
しのぶさんはその綺麗な紫色の瞳を、めいっぱい見開いた。
心底虚をつかれた様な匂いが、ふわりと鼻腔を突いた。
何かを無理やり閉じ込めていたような、とても悲しい匂いだ。
し「……そうですね、私はいつも怒っているかもしれません。
…自分にも、彼女にも」
炭「自分…?」
彼女という言葉の意味は、すぐ理解出来た。
しのぶさんからは、金月さんを憎んでいる匂いが漂ってくる。
だけど、奥底には溢れ出しそうな愛情の匂い。
ギリギリと締め付けられる様な怒りの匂いが、いつもしのぶさんからしていた。
し「…炭治郎君、彼女の噂は知っていますね。
……私と彼女は、昔はお互いを親友と呼び合う程仲が良かったのです。
…この意味、分かります?」
炭「!それって…」
し「……分からないんですよ、炭治郎君」
───分からないんだ。
それは先日に金月さんが言っていた言葉と似ていた。
しのぶさんにはアオイさんやカナエさんとカナヲ、蝶屋敷の女の子達など大切な家族は沢山いる。
でも、どこか──しのぶさんからは孤独の匂いがしていた。
その切ない匂いに、俺は思わず再度口を開いた。
炭「分からなくても、分かんなくても…これだけは言わせてください。
金月さんが本当に悪い人だとしても、少なくともしのぶさんの事は大切に想っていますよ。
俺は鼻が良いんです」
し「──!
そう、ですね…ありがとうございます、炭治郎君」
そう言って立ち上がったしのぶさんは、いつも通りの──でもどこか寂しげな笑顔を浮かべていた。
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きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» テンキュー!はいごみ収集車にぶちこむぜ☆オルァ! (2020年8月8日 0時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
みかんといちご - きーねちゃんさん» はーい!ニクマン\(^-^ )ブンッ (2020年8月8日 0時) (レス) id: 085b083a26 (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - kiki11241さん» なる……予定です!(おい)すいません頑張ります! (2020年8月5日 20時) (レス) id: d6c0176894 (このIDを非表示/違反報告)
kiki11241(プロフ) - あれ本当に杏寿郎オチかな? (2020年8月5日 19時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» へいパース!僕今ならゴムの手袋を五万枚重ねてるんで大丈夫でーす! (2020年8月4日 22時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルサ | 作成日時:2020年7月9日 18時