【鬼滅の刃】姉ちゃんは俺が守る。弐 (ページ22)

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陸拾漆話「少し休もう」ページ22

しのぶside

──のぶ─···。

誰？頭の中で声がする。

──しのぶ─···。

何？私まだ眠いの……。

"しのぶちゃん"

誰……？
刹那、パチッと泡が弾けた様な感覚と共にゆっくりと意識が浮上していくのが分かった。
朧気な意識の中、薄く開いた眼にぼんやりと髪の長い人影が写った。

し「雫、さん……」

カ「"しのぶ"」

ふわりと、優しく頬を撫ぜられる。
暖かくて、懐かしい気配。
ボヤけながらも開いた視界には、しっかりと姉さんの姿が写っていた。

し「姉、さん……？」

カ「おはよう、しのぶ。
よく眠れた？」

し「お、おはよう……」

目が覚めたら、あの真っ白な空間では無く私の自室だった。
横を見ると、桶に張られた水と手拭いがあった。
どうやら風邪を引いて、姉さんに看病されていたらしい。

現にあれだけ痛かった頭痛はほとんど収まっていた。
それでもまだ気持ち悪い感じはしたが。

し「姉さん、私…ッうッ」

仔細を聞こうと思わず勢いよく起き上がり、肋辺りに走った痛みに思わず上半身を曲げる。
姉さんは動じる事も無く、背中を優しく摩ってくれて緩やかにベッドに戻してくれた。

カ「駄目よ、まだ傷も風邪も治り切っていないんだから……。
しのぶね、鬼を斬った後に過労と風邪と怪我で倒れたのよ。
もう、無茶はいけないわよ？」

し「…ごめんなさい、姉さん。
次は気を付けるわ」

いつもの作り笑顔で、ニッコリと笑った。
大丈夫、大丈夫。
すぐ治して、また鬼を屠ろう。

カ「…しのぶ、少し休みなさい」

し「…え」

思想を、読まれた──···？

ピリ、と空気が張り詰める。
此方をジッと見つめる薄紫色の優しい瞳には、密かに怒りが灯っていた。
はく、と空気を求める様に薄く口を開けた。

カ「しのぶ、貴方は少し頑張り過ぎよ。
しばらく蝶屋敷は私達に任せて、貴方は休みなさい。
このままでは、しのぶの身体が壊れてしまう」

し「でも、姉さん！私、は……」

"柱として頑張なければ"

そう言い切る前に、優しく抱き締められた。

カ「貴方は"蟲柱"としてとても頑張っている。
……けど、"胡蝶しのぶ"はとても疲れているわ。
怪我もして風邪もひいて、とても辛い。
──この子達も、そう言っているわ」

し「この子達…？」

姉さんが視線を向けた方を見遣り──思わず目を見開いた。

どんぐりにお饅頭、色とりどりの花……。

──そして、一際大きい金木犀の花。

"しのぶちゃん！"

それを見て、文字通り花の様に笑った彼女の姿が脳裏に浮かんだ。
──ポロリと、いつの間にか一粒涙が零れ出た。