70 大星は勇ならず ページ30
然しそれは、男が少し、手を抜いていたから、という理由もあった。
こんなか弱そうな少女に、いなされる訳がないと。
最小限、力を抜いていたとはいえ、
刀を素人の様に扱えと言われていたとはいえ、
Aのその隠された力量に、目を見張る男と人質の少女。
反転した世界で、Aが爆弾を地面に置いたのが見えた、
次の瞬間。
自らの左手に衝撃を受け、そのレベルに合わせた動きをする――人質の少女を押さえていた手を緩めた。
見えてはいたが、然し常人とは明らかに違うその素早さで、男の懐に入ってきた其れ。
刹那、彼女は此方の眉間に二段目の攻撃を仕掛けた。
「…………っ」
その一撃を受け、後ろに体重移動をし、勢い良く地面に座り込む。
恰も、驚いた様に。
あまり、その表情は変わらない、いつも通り。
否、実際男は驚いていた。
彼女が反撃した場合、それが的確な一撃と判断すれば、
戦意喪失した様に転ける、そう指示を受けていたから。
然し、的確と云うか、なんと言わんとするか、それ以上の、その力量に吃驚した、地面への着地だった。
この少女の、石Aの、異能以外の才幹。
聞いていたものと、違う。
調べていたものと、違う。
高等学校剣道部で、大会出場の記載はあったものの、其処までの実力ではなかったはず。
そして、それ以降は、政府の施設にいたはず。
その時に、何か、あったのだろうか?
いや――考え過ぎだろう。
政府所属の者には、確かに幾人か手練がいたが……只の少女に、而も、特一級危険異能者に、手ほどきをする者など。
暇潰しか、冗談半分か、それとも、理由など、ないのか。
「こっち走って!」
そしてAのその叫びに、人質の少女はハッとし、直ちに足を動かした。
無論彼女も、一瞬でも自由の身になった場合、犯人の元から離れる様に指示されていた――
が、Aの思いもよらない行動に、咄嗟には動けなかった。
無刀取りで手に入れた刀の、その柄を男の手の甲に当て、
反射で緩んだ腕から解放された少女を呼び寄せ、
次いで男を行動不能にさせる。
本当に、只の特一級危険異能者では、ないのだろうか――?
首元に、刀をつきつけ、息の上がった声で、Aは言った。
「やめ、ましょう、もう」
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午(プロフ) - 雪さん» 雪様、ご感想ありがとうございます! 文章が綺麗っていわれてとーっても嬉しいです! 雪様にお会い出来て良かったです! また遊びに来てください! (2023年3月29日 22時) (レス) id: 26aa10f063 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - めちゃくちゃ感動しました…語彙力ないせいで上手く言葉に出来ないのが本当に悔しい…本当に文章が綺麗で惹き込まれます…この小説と出会えてほんとうに良かったです…( ; ; )♡ (2023年3月29日 5時) (レス) @page49 id: 235d41d493 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - yuriさん» yuri様初めまして、ご感想ありがとうございます!やばいくらい泣かれましたか……うぉぉありがとうございます!夢主を幸せに出来ました、思う存分叫んでください!これからも頑張ります。ありがとうございました! (2021年4月19日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - はじめまして!初めてこの作品を読ませていただいたものです!感想を一つ2つ言いたいのですがあの泣きましたすごいもおあのやばいぐらいはい。それでもう一つ夢主ちゃん最終幸せに生きれてよかったねぇて叫びたい└(^o^)┘ではこれからも応援してます!頑張って下さい (2021年4月19日 20時) (レス) id: 2cc33a2b3d (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - シオリ様、ご読了と感想についてのご質問有難うございます!小説用Twitterはありません!既に下記文面で喜んで頂けた事が判明しているので、宜しければ此方にご感想を書いて頂くか、何もしなくても大丈夫です!お気軽に、宜しくお願い致します!此れからも頑張ります! (2020年1月20日 21時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年7月14日 14時