泉鏡花 フルーツ牛乳 ページ28
「良っい湯っだなーやははーん」
Aさんがご機嫌に歌っている。私も響く声に合わせて、体を揺らした。
お湯加減は丁度良くて、広くて、身体に善い効能があって、街の片隅にある小さな銭湯、いい。
何時も私の頭を撫でたり、手を繋いでくれたり、抱き締めてくれる、
その柔らかな身体が、一糸纏わぬ姿で、同じ湯に溶けている。
そう考えると、春の日和の様な安らぎが襲ってきた。
こんな気持ちは、初めてで。
「たまには銭湯もいいよね。お風呂、明日には直るみたいで良かった！」
「うん。貴方が嬉しいなら、いい」
「鏡花さんは銭湯初めて？」
「うん」
二人して、壁の立派な富士山を拝みながら、頬に水を滴らせる。
「うーん…何時までも入っていたい…」
苦い顔をしている。どうしたのだろう。
「お風呂は全部回れたし、売り切れちゃうかもだから……そろそろ上がろう！」
なんか、妙に浮足立っているAさん。
湯から上がると何かあるのか。売り切れとは？
「はい鏡花さん。しっかり髪拭こうね」
いつも通り、私の髪を優しくタオルで包んでくれる。目を閉じてしまうくらい心地良いから、好き。
そして彼女が離れて行くのを感じ、タオルを取って視界を開くと、番台で何か購っていた。
「あー！これ未だ在庫あったんだぁ！じゃあ二本！」
笑顔で持ってきてくれたのは。
「牛乳……？」
「フルーツ牛乳！もう販売終了しちゃってたんだけど、ラッキー！」
トロピカルな牛乳瓶。キンキンに冷えている。何だろう、これ。
「風呂上がりはこれだよ！」
「あ、ありがとう」
冷たっ、い。
落ち着いて、Aさんと一緒に、蓋を開け、
「腰に手を当てて！」
「腰に」
手を当てて、グイッと飲んだ。
「！」
甘い！
牛乳に、林檎に蜜柑にバナナにパイン、色んな果物の味が、火照った体に染み渡る。
初めて飲んだのに、何処か懐かしい。
「まろやかで冷たくて…はあ」
遠くを見る様な眼差し。
そうか、これはとても、貴重なモノ。
そんな大事なモノをくれた。
フルーツ牛乳で冷えた体。
心はじんわりと温かくなっていく。
「Aさん、これ、美味しい」
隣にピタリとくっついた。
「また一緒に、飲もう」
私の言葉をきいて、Aさんは微笑んだ。
ありがとう。
傍にいてくれて。
甘くて優しい
この時間が、
何時までも、続きます様に――。
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午(プロフ) - 体の90%がラムネさん» 体の90%がラムネ様、ご感想ありがとうございます！また三期でお待ちしております、宜しくお願い致します！更新頑張ってください！ (2019年12月21日 23時) (
レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 闇川幽鬼様、単品で織田作登場です！ありがとうございます！ (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
体の90%がラムネ - 初コメです！めっちゃ良きでした！！突然ですが、リクエストしたいですが…。ダメでしたね。すいません！また募集している時にいきます！更新待ってます！(自分も更新しろよと思う今日この頃) (2019年12月21日 13時) (レス) id: 8dd45af6f4 (このIDを非表示/違反報告)
闇川幽鬼 - 作之助様登場！！(*ﾟ∀ﾟ*)嬉しいです！(*^_^*) (2019年12月21日 0時) (レス) id: 56867ea8da (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 月瀬さん» 月瀬様、リクエストありがとうございます！只今からのリクエストは無効とします。ゆっくりで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します！ (2019年12月15日 11時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午 | 作成日時：2019年8月25日 17時
