芥川龍之介 檸檬飴【ハイド様Req.】 ページ13
吐いた息が白い。
肌を刺す寒さ。
「こほ…………」
長い睫毛を瞬かせ、芥川は空を仰ぐ。
「此処にも、Aは居らぬ」
ヨコハマスタジアム、ポートタワー、港公園、中華街、何処に居るのか。
昔から放浪癖のある奴だったが、今回の捜索は難色を示していた。
然れども、何処に居ようが、必ず僕が見付ける。
「却説」
カサっと、光が反射した。
黄色い粒の入った透明な袋。
嫌悪感が湧く。
兎に角Aは、常時此の飴を舐めては顔を窄めていた。
“口に何か入れていると、異能が安定するんだよ”
何を戯言を。
“疲労回復に眠気覚ましに美容効果、酸いも甘いも優しさも、全部摂れるね”
貴様を。
Aを支配するのは、
僕だけで善い。
「…………」
「お、探しに来てくれたんだね」
見付けた。廃ビルの屋上、西陽の差す、夜の帳が下りる頃。
「太宰さんの御自宅を探す序でに、目についたので近くに寄っただけの事」
「太宰の家、未だ探してんだ……まあいいや、羅生門で温めて！」
「…………」
寄り縋って来たが。
この僕を差し置いて、異能力如きの方に惹き寄せられるとは。
「愚かなり」
苛つきを隠さず、
引き寄せ、口付けた。
弱い。
檸檬の香、
檸檬の味。
「…………っ……」
舌を入れると、強い酸味が襲ってくる。
矢張り、飴を忍ばせていた。
「ん、……ぅ」
想定していなかったからか、微動だにせず、されるがままのA。
そう、
貴様は其れで善い。
其れで善いのだ。
息苦しいのか背中を叩かれる。では最後にと、せめてもの報復に、その口内の檸檬飴を奪ってやった。
吃驚顔で腰を抜かしたAを、羅生門で支えてやる。
「………」
「如何した？」
「……最後の一個、だったのに……」
今まで味わった中でも、最も純粋に酸っぱい飴。
溜めた涙が光るその瞳の中の僕は、無表情だが。
「……僕の傍から勝手に離れるな。次すれば殺す」
「えぇ……怖っ」
そう云って、身体を預けてくるAは安心した表情。
とろんと、緩んで。
Aと僕の体温が重なれば、
飴も溶けゆく。
早く、この酸味から逃れたい。
早く、この清涼から逃れたい。
モゴモゴと飴を含む芥川を見て、Aは。
「何故笑う」
「別に？」
その日の夕焼けは、まるで檸檬の飴が
溶けた様にゆがんで。
彼等も優しく、包み込まれていった。
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午(プロフ) - 体の90%がラムネさん» 体の90%がラムネ様、ご感想ありがとうございます！また三期でお待ちしております、宜しくお願い致します！更新頑張ってください！ (2019年12月21日 23時) (
レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 闇川幽鬼様、単品で織田作登場です！ありがとうございます！ (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
体の90%がラムネ - 初コメです！めっちゃ良きでした！！突然ですが、リクエストしたいですが…。ダメでしたね。すいません！また募集している時にいきます！更新待ってます！(自分も更新しろよと思う今日この頃) (2019年12月21日 13時) (レス) id: 8dd45af6f4 (このIDを非表示/違反報告)
闇川幽鬼 - 作之助様登場！！(*ﾟ∀ﾟ*)嬉しいです！(*^_^*) (2019年12月21日 0時) (レス) id: 56867ea8da (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 月瀬さん» 月瀬様、リクエストありがとうございます！只今からのリクエストは無効とします。ゆっくりで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します！ (2019年12月15日 11時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午 | 作成日時：2019年8月25日 17時
