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「察しの良いお嬢さんだ」
フィッツジェラルドはグラスを置き、
「異能力発動中、無意識状態になることがあるんだろう?」
高らかに言葉を発した。
「その時に君から歌で発せられる人外の言葉こそ、ーー
本の在処を示しているのだ!」
バサッと風が吹いた。
そんな……。
私は知らない。
周りの人が、教えてくれた。
何か知らない言葉で歌っていると。
でも、私はほぼ無意識だと。
――トランス状態。
あの時に、
治癒をしていると同時に、
本の在処を示していた?
「どうして……私の、揺らぐ福音に」
「知らん、どうでもいい。とにかく、君は本国の、解析の異能者の元へ連れて行く。それまでゆっくり過ごすといい」
「そ、それまで拠点に戻っちゃ駄目ですか?」
とりあえず、ヨコハマを離れるのは嫌なので、
あと拐かされたから、首領に何も言わずに出て来てしまったみたいなものだし、
普通に釈放を望んでみた。
が。
「そうかね」
彼は脚を組み直す。
そして微笑んだ。
「ミス・カケイ――貴女のご家族は地方で暮らしているそうだな」
「え?」
言葉を続ける。
「父君、母君、姉君に弟君が2人……皆、同じ一軒家に暮らしている」
「……な、何が、云いたいので」
言葉を、冷徹に続ける。
「一度で灰にしやすいだろう?」
「!」
理解し……Aはその場に、座り込んだ。
「………………」
「さてどうだ? この船の旅を楽しむ気になったろう?」
最初の……首領に誘われた時と違う。
あの時、云い包められた感があったけれど、
確かに私もしっかり考えていなかったかもだけど。
ヨコハマを脅かす、
ポートマフィアかもしれないけど。
みんなは。
そんなこと。
でも。
でも……
「……終わったら、帰してください。家族のことも」
「身内のことを大事にするのは、私も同意だね。だから君は、丁重にもてなそう」
Aはスクッと立ち上がる。
「結構です!」
あっかんべえをして、ズカズカ歩き、扉を強く閉め、出ていった。
「は、ははっ!」
フィッツジェラルドは笑う。
「まあ、全てが終われば、帰る所などなくなる……直にヨコハマは、灰となるのだから」
パチンと指を鳴らした。
「そうなれば、あの少女は、我が妻専用の小鳥にしよう!」
そして、Aの知らぬ所で、ヨコハマ焼却作戦は、進む。
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午(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年5月14日 21時