38 クジラ、扉 ページ39
だって、凄く眺めがいいから……
大好きな街を、
見下ろす日が来るなんて。
ポタポタと、涙が込み上げてきた。
目を両手で抑える。
謎の板挟みに耐えられなくなったから。
「ちょっと……」
ルーシーの呆れた声が聞こえる。
「……すみません」
目を開けると、鯨の刺繍がされた白いハンカチを持った、嗄れた大きい手。
顔を上げれば、白髪で白髭の老人が立っていた。
「…………」
「あ、ありがとうございます……」
ハンカチを受け取ると、老人はポケットからパイプを取り出し、杖で歩いて行ってしまった。
「あの方は……」
「この白鯨の持ち主って所ね。全くもう、目の下腫らしてどうするのよ。これから団長に会うってのに、あたしが泣かせたみたいじゃない」
Aの顔を覗き込むルーシー。
「髪もぐしゃぐしゃよ」
髪を整えてくれた。
「ルーシーさん……ありがとうございます」
「お、お礼は結構よ。ほら、この部屋に団長はいらっしゃるわ」
白を基調として、洗練されたデザインのドア。
「あの……その団長というのは」
「この組合のトップよ。全く、どうしてそんなに呑気なのかしら」
Aを拐かした組合のトップ。
そうだ、何故私を、わざわざポートマフィアの敷地にまで足を踏み入れて、この白鯨へ招いたのか。
聞いて、それから脱出の作戦を練ろう。
私だって、一人でこれくらい、出来なければ!
ルーシーは扉をノックし、少ししてゆっくりと開けた。
とても広い部屋に、大きい窓が見えて、どれもこれも一級の調度品が並べられ、そして中央のソファに座っている男一人。
高そうなスーツに高そうな靴、気品ある顔立ちだが傲慢不遜な雰囲気、手にシャンパングラスを持っている。
Aが部屋に入ると、ニヤリと笑ったその男は口を開いた。
「ようこそ組合へ、
――――〈本〉の在処を示す者よ」
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午(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年5月14日 21時