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33 いもうと ページ34

それは、天にも昇るような恍惚の表情を浮かべたAだった。


「新しく出来た西洋生菓子店、果物をふんだんに使った生菓子が売りで! 今から銀ちゃんと行く予定なんです! 一緒に行きましょう!」


 凄い勢いだと、芥川は思った。


「了解しました。然し申し訳ありません、僕はこれから任務でして」

「あら、そうなんですか。じゃあ私達買って来ますので、帰って3人で頂きましょう!」

「然し」

「選ぶのが最高の楽しみと言っても過言ではありませんので! お任せください!」

「……判りました」


 肩から両手を離し、口に手を当てて、考えを巡らせる。


 女というのは、甘い物が好きなのだろうか。
 それとも、Aさんが。


 栄養補給が欠かせない異能だからか?


「龍之介さん、どんなのがいいですか? お好きな果物、ありますか?」

「果物……」


 それは、兼ねてから。


「……無花果です」

「無花果!そうなんですか! 了解です! じゃあ夕方、私の部屋に来てくださいね!」


 彼女はとても楽しそうだ。


 僕なんかと会話をしているのに、いつも微笑みを絶やさず、それが僕の心を落ち着けさせている。

 これが、心地良い、というものだろうか。


「銀といえば、Aさん、愚妹がいつもお世話を掛けております」

「いえいえとんでもない! とても気の使える良い子で、大変助かってます!」


 手をぶんぶん振り、言葉を続ける。


「寧ろ、私の妹にしたいくらいです!」


 その瞬間、芥川は目を見開き、酷く詰まった咳をした。


「わ! 龍之介さん、大丈夫ですか?」

「……し、心配は御無用……では、済みません、任務に向かいますので……」

「あ、はい! 無理せず、頑張ってくださいね! いってらっしゃーい!」


 見送られ、背中を丸めたまま廊下の角を曲がる。
 彼女の気配が消えた。


「それはつまり」


 芥川は小さく呟く。


「芥川家に嫁ぎたい、と云うことでしょうか」


 その途端、熱くなった。


 …………。


 いやいや、僕は何を考えている。
 任務に、集中しろ。


 そうして顔を抑えたまま、彼は戦地へと赴いた。

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設定タグ:中原中也 , 芥川龍之介 , 文豪ストレイドッグス   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年5月14日 21時

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