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31 名前 ページ32

歌が終わり、拍手が続く。
 ペコリとお辞儀をしたAが振り返った。


「あ! ひぐっちゃんに、芥川さん! 任務お疲れ様です!」

「あ、筧さん。おつか」

「ひぐっちゃん」

「あ……Aさん、お疲れ様です」

「えへへ。お疲れ様です。任務だから、お着物着れなかったんですね」


 しゅんとするAの袖を掴み、指を自らの頭に向けた。
 見れば、あの時購入したお揃いの、星のかんざし。


「わぁ、やっぱりひぐっちゃん可愛い! お揃いですねー!」

「わわわ! あ、私は、任務の報告をして参りますので!」


 あわあわしながら、樋口はテーブルの方へ行ってしまった。

 そしてAは芥川の方へ振り向く。


「わっ」


 割と真後ろにいたので、驚くA。


「…………」

「えへへ、綺麗ですよね、この花吹雪」

「…………」

「芥川さん?」

「あの」


 瞬きをせず、彼は云う。


「僕の事は、名前で呼んで頂きたい」


「え?」


 柔らかい風が吹いた。
 芥川さんの髪が靡き、私の髪も靡く。


「その、呼ぶ際、
 銀もいるので、
 不便かと思い」

「ああなるほど! ですね! 了解です!」


 確かにそうだ……!
 とAは凄く納得する。


「今まで気付かなくて申し訳ありませんでした! なんなら私のことも、名前で呼んじゃってくださいね」

「分かりました」


 即答された。


「Aさん」

「はい、龍之介さん!」


 互いに呼び合い、Aは微笑んだ。
 芥川は目を閉じて咳をする。


「大丈夫ですか?! お席、ご案内しますね!」


 背中を擦り、肩を持って、空いていた右隣の席に芥川を座らせる。


「……忝ない」

「いえいえ、何でもお手伝いしますから! 龍之介さん、何飲まれます?」


 その様子を対岸で見ていた尾崎は少し驚きながら、笑う口元を隠した。


 Aの隣の席は樋口の為に空けてやっていたんじゃが……これはこれは、中也も大変じゃぞっ。


 Aは。


 Aは、
 わっちの心も、
 中也の心も、
 そして芥川の心までも救おうとしている。


 ――絶対、不幸にはさせぬ。


 白い花びらが舞う中、彼女は深く、決心した。

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設定タグ:中原中也 , 芥川龍之介 , 文豪ストレイドッグス   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年5月14日 21時

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