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【シャルside】
「シャル？」
中々帰ってこない俺を心配した陽菜が談話室に来た。
俺は来たのに気付いていたが、もう一度Aに電話をかけた。
プルルルル…
プルルルル…
呼び出し音が鳴るだけで、出る気配が一切ない。
「まさか、彼女？」
『そうだよ。』
俺は重いため息をつき、スマホを耳から離す。
出てくれない、いや、出てくれるはずがない。
俺は最低だ。
「あ、そっか。今日、クリスマスだもんね。」
多少は申し訳ないと思っているのか、陽菜は目を伏せた。
窓の外をふと見ると、雪が降っている。
A…。
『ごめん、陽菜。
Aを待たせてるんだ。』
椅子から立ち上がると、鞄の中でAへのプレゼントがゴトッと揺れた。
そのわずかに感じる重みが、Aへの罪悪感を増大させた。
「やだ！」
立ち去ろうとする俺の腕を、陽菜は両手で掴んできた。
「お願い、そばにいてよ。ひとりにしないで。」
『悪いけど、俺以外の誰かを呼んでくれない？
陽菜にはたくさん友達がいるでしょ。
その子が来るまでならいる。
あと…Aも今、��ひとり��なんだ。』
そう言って手を振り解くと、陽菜は顔をくしゃっとした。
今にも泣いてしまいそうだ。
「シャルがいい！
シャルじゃなきゃ嫌だ！
私の方がシャルのことが好きなのに！」
「陽菜…！」
額に汗を滲ませ、廊下を走ってきたのは陽菜の友達だろう。
「陽菜の家に行ったら誰もいなくて、近所の人にお父さんが救急車で運ばれたって聞いて…！
…その人は？」
『俺は陽菜の友達です。
…もう大丈夫だね、陽菜。』
陽菜の友達にペコッと頭を下げ、2人に背中を向けた。
陽菜は「シャル！」と名前を呼んだが、俺は振り向きもせずに急いで病院を後にした。
今から急いで行っても、19時前になる。
お願い、待ってて。
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作者名：きなこもち | 作成日時：2021年5月2日 11時
