命名 ページ8
少女はまた静かに頷いた。
シャル「じゃあ、君は今日からAだね。
よろしく、A。」
俺が握手を求めると彼女は恐る恐る俺の手に触れた。
その手は氷のように冷たかった。
シャル「もしかして、寒い?」
と、聞くとAは遠慮がちに頷いた。
今は決して寒い時期ではないが、日が差し込まないこのアジトは外より気温が低い。
俺たちは鍛えているから筋肉で寒さとかは感じないが、相手はか弱い少女だ。
体温調節ができないと体調を崩してしまう。
シャル「ごめんね、今すぐ毛布持ってくるから。」
と、言い残して俺は毛布と何か温かい飲み物を取りに自分の部屋に向かった。
数分後、急いで用意をしてAのいる部屋に戻ると彼女はやって来たのが俺だとわかった瞬間少し緊張を緩めた。
俺にこんな安心してくれる彼女についつい頬が緩くなってしまう。
シャル「遅くなってごめんね。
これ毛布だよ。あとココアもいれてきたんだけど飲むかな?」
毛布を彼女に被せてそう問うた。
彼女は頷きもしなければ首を横に振ることもなかった。
迷っているのだ。ココアにもしかしたら毒とか入っているかもしれないから。
安心させるために俺はそのココアを一口飲んだ。
何ともない俺の身体に、ココアに毒が入っていないことが分かったのかAはココアを少し飲んだ。
ゴクリと鳴らす彼女の喉でさえ可愛い。
一口飲むと味が気に入ったのか次々と飲んでいった。
シャル「美味しい?」
少女はまたこくりと頷く。
その反応に満足した俺は彼女が座るベッドの横に腰掛ける。
彼女も警戒は解いてくれているようだ。
彼女がココアを全て飲み切ったのを確認しつつ、俺は一番聞きたかった質問を彼女に問うた。
シャル「Aのその能力の代償は何?」
ダイレクトに聞きすぎたかなと後々後悔する。
Aは顔を俯かせた。
あ、まだ喋れないか…。
シャル「無理して言わなくてもいいよ。
ゆっくりで大丈夫。ここには君を乱暴に扱うやつは一人もいないからね。」
と、俺はベッドから腰を持ち上げ、部屋を後にしようとする。
『…あ…。』
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年4月16日 17時