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『 そろそろ 起きてや。』


関西訛りの高い声が聞こえる。


目を開けると、ああ、やっぱりいつ見ても整った顔。



パイプ椅子に腰掛けているのは、白衣ではなく、真っ黒なジャケットを羽織った永瀬さん。


「 黒い…。白衣忘れたんですか?」

『 ちゃうわ!もうとっくに仕事終わったし、とっくに面会時間過ぎてるわ。』



窓の外はもう暗くなり、星が出ている。確かにもう大分夜遅い気がする。



「 え、じゃあ、何してるんですか?」

『 Aが起きるの待ってたんや。顔合わせんとまた嫌われてまいそうやし。ちゃんと話すの何日ぶりやろ?まあ、勝手にお前の寝顔見てたけどな。』



1人でケタケタ笑ってる。

寝顔を見られるなんてこっちは死活問題だっていうのに。


寝顔も綺麗な永瀬さんには私の悩みなんて分からないんだろうなあ。永瀬さんの寝顔なんて見たことないけど。



『 ほんとに昼夜逆転してもうたな。』

「 しょうがないですよ。入院する前はずっとこんな感じでしたし。」

『 そうやったんや。ごめんなあ〜、俺夜勤入れてないねん。最近Aに何もできてへんわ。』

「 その勢いで、担当変えてくれてもいいんですよ。」

『またそんなこと言うて。ホンマ懲りないなあ。』



もうこんなやり取りも懐かしい。



永瀬さんと話していると余計なことを考えなくて済む。つらかった過去のことも、怯えて生きる今のことも、全部。



『 昨日 しんどかったんやな。朝、テーブルの上に紙置いてあんの気づいて焦ったけど、A、スヤスヤ寝てるし何にもできんくて。でも、教えてくれてありがとうな。』



何もできないなんて言いながら、こうやって仕事終わりに、私が目を覚ますまでずっと待っていたのに。様子を見に来てくれたのに。それだけで私の心は軽くなるのに。


それでも柄にもなくしゅんとしている永瀬さんに対して、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



今までなら、どんなに失礼なことを言っても、どんなに永瀬さんを困らせても、何とも思わなかったのに。

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作者名: | 作成日時:2019年4月20日 12時

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