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「 いい加減にしろよ！」
私の腕を掴んでいた男が、もう一方の手を勢いよく振り下ろした。
怒鳴り声と共に、乾いた音が フロアに響く。
あの2人は私を見て笑いながら逃げて行ってしまった。
何が起きたのか分からなかった。
頬がジンジンと痛む。
ああ、また殴られたのか。
痛い。
私 何かしたかな？また怒らせてしまったのかな？
涙が溢れてくる。
いつの間にか、さっき買ったミルクティーの中身が、ベンチから転がり落ちて、床に飛び散っていた。
涙でボヤける視界に、踏み潰された青いパッケージが滲んで映る。
暴れたせいで腕から外れてしまった点滴が、ポタポタと床を濡らしていく。
力が抜けて床に膝を着くと、ミルクティーの香りが鼻を掠めた。
この匂い。あの人と付き合っていたときによく飲んでいたミルクティーの香り。人生で1番苦しかったあの頃の匂い。私の大好物 “ だった ” ミルクティーの甘い味。
甘い匂いが悲しい記憶を引き連れてくる。
暴力、暴言、ひとつひとつ 鮮明に蘇ってくる。
どうして？どうして？どうして？
「 はあ…っ、いやだっ！はあっ… 、」
考えれば考えるほど、息ができなくなる。頭がぼうっとして、目の前が暗くなってくる。もう嫌だ。苦しい。誰か助けて。
もうこのまま 消えてしまいたい。と、心から思った。
．
真っ黒な服を身にまとった誰かが 駆け寄ってくるのが、微かに見える。
『 A！』
朦朧とする意識の中で、私の名前を呼ぶ声だけはしっかりと届いた。
なんだかひどく安心する声が、5日ぶりに聞こえた。
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作者名：白 | 作成日時：2019年4月20日 12時
